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嵯峨野明月記 中公文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 中央公論社 |
発売年月日 | 1990/08/10 |
JAN | 9784122017375 |
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嵯峨野明月記
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商品レビュー
4.1
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幾多の戦国武将達が興亡し、全てのものが移り変わっていく時代に生きた、3人の男達の生き様の物語。 全編にわたって、一の声(本阿弥光悦:刀研ぎ師、書家)、二の声(俵屋宗達:絵師)、三の声(角倉素庵:実業家、学問研究)の独白により進行する。改行が全くないが、情景描写の巧みさで不思議とス...
幾多の戦国武将達が興亡し、全てのものが移り変わっていく時代に生きた、3人の男達の生き様の物語。 全編にわたって、一の声(本阿弥光悦:刀研ぎ師、書家)、二の声(俵屋宗達:絵師)、三の声(角倉素庵:実業家、学問研究)の独白により進行する。改行が全くないが、情景描写の巧みさで不思議とスルスル読まされる。 彼らの生きた人生は、私に「この移りゆく世の中で、必ず死ぬ身として、お前は今をどう生きるか?」と問いかける。 20代の私にとって、死はまだまだ遠い気もするが、6年間の大学生活ももう直ぐ終わりを迎える今、振り返ってみればあまりにあっという間であった。きっと人生はこんな感じで、あっという間に終わってしまうであろう。この人生の残された時間はうっかりしていると砂のように手からこぼれ落ち、気づいたら死がもう目の前に来る。その時なって初めて自分がこの世に残したものは何もなく、あまりに多くの時間を無自覚に浪費してきあことに気づく。そうならないためにはどうしたら良いか、そのためのヒントがたくさんこの本には記されていたように思う。その一つは、こうしてブクログに読んだ本の感想を記録していくことだと思う。 10年くらいごとに読み返し、その都度自分の人生を振り返る機会としたい。
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時は、戦国末期から江戸時代初期。 場所は京。 そこに、性格も生まれも異なる三人の男たちがロマンを求めて結集する。 書の本阿弥光悦、絵の俵屋宗達、出版の角倉与一だ。 天才二人に対して、角倉与一には、ビジネスマンと営業マンの血が流れていて、親近感を覚えさせる。 ある境地を求める三人...
時は、戦国末期から江戸時代初期。 場所は京。 そこに、性格も生まれも異なる三人の男たちがロマンを求めて結集する。 書の本阿弥光悦、絵の俵屋宗達、出版の角倉与一だ。 天才二人に対して、角倉与一には、ビジネスマンと営業マンの血が流れていて、親近感を覚えさせる。 ある境地を求める三人の波乱に満ちた人生を通して、作者辻邦生の理想を目指す。 辻によるこの理想追求の姿勢は、「西行花伝」で更にレベルアップすることで、一つの達成を見たと言える。 その意味では、本書は「西行花伝」に向けての大きなステップだと言えるだろう。 すべてを一人称で語る本書のスタイルは「西行花伝」でも踏襲される。 但し、それは複数の一人称だ。 辻には恋愛小説家としての血が脈々と流れている。「西行花伝」では、西行と待賢門院との恋愛が印象的に語られているが、本書では、本阿弥光悦と月明の女との恋愛、角倉と梅毒の太夫との恋愛が物語に彩りを与えている。 さすが恋愛小説家の面目躍如だ。 芸術に燃える三人ばかりでなく、主役は京の街と人だ。 信長の天下取りと没落、秀吉の天下取りと没落(朝鮮出兵の悲惨) 、家康の台頭という、兵馬が行き過ぎる時代の中で、京の街と人は、いかに逞しく生きたか、という物語でもあるからだ。 京都人には、藤原定家が宣言した「紅旗征戎我がことにあらず」の伝統が脈々と流れているのだ。 戦乱の時代を生き切り、すべてを見た男が、次々と不要なものを捨てていく中で、森羅万象に解き放たれ、一体化する喜悦の境地に至る。 それが、辻邦生の理想とする境地なのだ。
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「嵯峨本」と呼ばれる豪華本の制作にたずさわった本阿弥光悦、俵屋宗達、角倉素庵の三人の物語です。 三人の登場人物が交替に語り手を務めて、戦国時代から江戸時代にかけての激動の時代を彼らがどのように生き、それぞれの立場から芸術に対してどのようにかかわっていったのかということがえがかれ...
「嵯峨本」と呼ばれる豪華本の制作にたずさわった本阿弥光悦、俵屋宗達、角倉素庵の三人の物語です。 三人の登場人物が交替に語り手を務めて、戦国時代から江戸時代にかけての激動の時代を彼らがどのように生き、それぞれの立場から芸術に対してどのようにかかわっていったのかということがえがかれています。 現実の事象をえがきとるのではなく、みずからの心のなかに生じるかたちを筆によってえがきだすことをめざす天才肌の宗達と、実業家として学問や芸術へのみずからのあこがれを抑えつつ、優れた芸術をこの世界にのこすために力を尽くした素庵の物語がわかりやすいのに対して、光悦の物語はすこしむずかしく感じました。土岐民部の妻との関係などは、ややメロドラマ的な印象もあって読みやすいのですが、そうした移ろいやすい現実に対して、彼のなかで芸術の世界がどのように位置づけられていたのか、もうすこし明確に叙述してほしかったように感じました。 三人の語りが交互に織り成される構成もおもしろく、いつかまた読み返してみたいと思える作品でした。
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