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百合子、ダスヴィダーニヤ 湯浅芳子の青春
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百合子、ダスヴィダーニヤ 湯浅芳子の青春

沢部仁美(著者)

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百合子、ダスヴィダーニヤ 湯浅芳子の青春

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 文藝春秋/
発売年月日 1990/02/25
JAN 9784163440804

百合子、ダスヴィダーニヤ

¥1,375

商品レビュー

3.8

8件のお客様レビュー

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2019/01/13
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※このレビューにはネタバレを含みます

 ロシア文学者、湯浅芳子(1896~1990)の前半生を描いた伝記。映画は未見。湯浅の業績についても詳しくないまま読んだのですが、それでも読み応えのある本でした。    同性愛者であり、「自覚しないフェミニスト」として描かれる芳子には、女性の立場をめぐる問題が最大の命題としてつきまといます。耐えるだけの人生を送った母、奔放でありながら恋愛に縛られた女流作家・田村俊子、虐げられた芸妓の恋人・セイ、そして“女を愛する女”として生まれた彼女自身。「どんなに強がっても、どんなに悪ぶっても、結局のところ女を裏切れない。心底愛してしまう」性質でありながら、「愛した女はみんな、男のもとへ去っていった」彼女の前に現れた百合子は、その純粋さと透徹した知性、豊潤な感性で芳子をひきつけます。失敗した結婚に苦しんでいた百合子もまた、独自の鋭さと自尊心を持った芳子に惹かれ、やがて二人は恋に落ちます。    女性でありつつ身を立てることができ、性的にも男性を必要としなかった芳子は、男性と女性を「恋愛」によって結び付けながら、それによって支配―被支配関係を強固にする当時の結婚という制度とは無縁の場所にありました。その芳子と百合子との「新しい愛」は、自由であるゆえに、はじめのうちは純粋で美しいものです。筆者の言葉を借りれば、二人が目指したものは対等に、互いが互いを高めあう「友愛」そのものでした。  しかし、二人の個性はすれ違いを生みました。それはかえって絆を深めもしましたが、やがて二人の関係には当時の男女の関係そのものの影が落ち、亀裂は大きくなっていきます。  女に対する男の暴力性を憎みながら、それに抗うために憎むべきはずの男と同化し、時に百合子に手を上げさえした芳子。芳子を愛しながら、「恋はする、しかし愛しきれない」自己を抱えて、次第に“本物の”男性を渇望するようになる百合子。ロシア留学を経て百合子は社会主義に傾倒していき、とうとう帰国後、宮本顕治のもとへと出奔しました。それは「友愛」という遥かすぎた二人の愛の理想が、「恋愛」という現実に屈したことをも意味していました。  最後のほうに引用された芳子の日記に、「女だから百合子を愛したのではない、百合子が百合子であったから愛していたのだ」という意の文章があります。その愛の境地をまっとうしようとした二人が残した日記や手紙に横溢する感情は、百年近く経った今も印象的です。 (対象の性別にかかわらず)社会的ないし心理的に「女性」であるひとが愛する、または愛し合うとはどういうことなのか。湯浅芳子自身の強烈な個性と、現代社会におけるジェンダー問題への意識がからみあって、かなり共感を覚えます。  といっても、私はきちんとフェミニズムを勉強したことがない口でした。フェミニズムのみならず、セクシュアリティ・ジェンダーといった大きな問題というより、「恋愛」そのものに違和感を感じたことのあるひとにはお勧めできる本かなと思います。

Posted by ブクログ

2015/05/09

面白いですね。湯浅芳子という人物、また、中條(宮本)百合子という人物が生き生きと描かれています。著者は湯浅芳子を正当に評価、紹介する目的で書いているので、百合子に対して少し厳しい面もあるかと思いますが、二人が一緒に暮らした大正末期から昭和はじめの日本人女性の生き方を考えさせてくれ...

面白いですね。湯浅芳子という人物、また、中條(宮本)百合子という人物が生き生きと描かれています。著者は湯浅芳子を正当に評価、紹介する目的で書いているので、百合子に対して少し厳しい面もあるかと思いますが、二人が一緒に暮らした大正末期から昭和はじめの日本人女性の生き方を考えさせてくれます。著者が二人の心情を代弁して書いている内容が事実と言えるかどうか、私には判断する知識も能力もありませんが、その意味付は読者一人一人が考えるべきことでしょう。

Posted by ブクログ

2012/07/24

 以前に映画を観たのがきっかけで、読みたいと思っていた本。大学の図書館に所蔵があって読むことができました。良かった!百合子さんと芳子さんの書簡や日記が多く引用されていて、リアルな感情のやり取りを感じられた。「世の中的に普通とは考えられない恋愛」をすることとは、どういうことなんだろ...

 以前に映画を観たのがきっかけで、読みたいと思っていた本。大学の図書館に所蔵があって読むことができました。良かった!百合子さんと芳子さんの書簡や日記が多く引用されていて、リアルな感情のやり取りを感じられた。「世の中的に普通とは考えられない恋愛」をすることとは、どういうことなんだろう。そのことを考える材料になった。  それから、大正・昭和の日本、革命直後のロシアなど、あまりなじみがない時代についての記述も多く、自分の知識不足を改めて実感。  もう一度機会があれば映画を観たいと思う。

Posted by ブクログ

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