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火刑都市 講談社文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 講談社/ |
発売年月日 | 1989/07/15 |
JAN | 9784061844797 |
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商品レビュー
3.8
11件のお客様レビュー
東京四谷の雑居ビルの…
東京四谷の雑居ビルの放火事件で若い警備員が焼死する。次々に放火事件が起こります。動機も考えさせられるものもありますし、ミステリーとしても面白いです。
文庫OFF
東京の昔の話はおもしろく勉強になった。 それに、地方から上京した女性の東京に対する恐怖や負けまいとする心意気・孤独は、同じ経験があるからなんとなく共感できた。 ただ引っかかったのは、刑事の勘がちょっと悪いんじゃないか?ということ。 私が読んでて気にかかった事を刑事はスルーしたり気...
東京の昔の話はおもしろく勉強になった。 それに、地方から上京した女性の東京に対する恐怖や負けまいとする心意気・孤独は、同じ経験があるからなんとなく共感できた。 ただ引っかかったのは、刑事の勘がちょっと悪いんじゃないか?ということ。 私が読んでて気にかかった事を刑事はスルーしたり気づかなかったりしてて、放火事件の真相が分かるにつれてやはり関係あったじゃん!って事がいくつかあった。 そこがちょっと疑問。 しかし、中だるみせず読ませるのはさすがだなと思う。
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東京各所で発生する連続放火事件を扱った本書は、それまでの作品でも顔を覗かせていた島田氏の都市論、日本人論が前面に押し出された島田版社会派推理小説だ。本作で主人公を務めるのが中村刑事。御手洗シリーズの短編「疾走する死者」で登場し、さらにもう1つのシリーズ、吉敷シリーズにも登場してい...
東京各所で発生する連続放火事件を扱った本書は、それまでの作品でも顔を覗かせていた島田氏の都市論、日本人論が前面に押し出された島田版社会派推理小説だ。本作で主人公を務めるのが中村刑事。御手洗シリーズの短編「疾走する死者」で登場し、さらにもう1つのシリーズ、吉敷シリーズにも登場している刑事だ。御手洗シリーズに出ていた刑事が主人公を務めるのはこの他に『斜め屋敷の犯罪』に登場した牛越刑事の『死者が飲む水』があるが、両シリーズに跨って出ているのはこの人物だけだったのではないだろうか(後にある作品では御手洗シリーズのある人物と吉敷シリーズのある人物が邂逅するが、それはまた別として)? とはいえ、この中村刑事は主役を務めるほど特徴的な人物かといえばそうではなく、むしろ人物としては地味。確か画家のようなベレー帽を被っているという叙述があったぐらいだと記憶している。したがってもちろん閃き型の天才型探偵ではなく、地道に靴底をすり減らして現場百遍を実践する努力型探偵だ。私は読んだことないが、クロフツのフレンチ警部シリーズのような人物像といえるのではないか。 さて物語はある警備員の焼死体発見から、彼が勤務中に睡眠薬を飲んでいたため、気づかずにそのまま焼け死んだという職務怠慢のレッテルを貼られた不名誉な死に対して、中村刑事が疑問を持ち、捜査するうちにある女性に行き当たり、その女性が鍵を握っていると判断し、その女性を追うという展開を見せる。そして東京各所で頻発する連続放火事件の捜査も同時並行的に行われる。 やがて浮かび上がってくる犯人の動機はどちらかといえば観念的である。ただこの常人に理解しがたい、一種狂気を感じさせる動機もこういう作風に妙にマッチしてあり、個人的には納得できた。 そしてこのような渋い社会問題を内包した作品であっても、島田氏はトリックを挿入することを忘れない。確かそのトリックというのは短時間でどのように犯人は火を起こすのかという謎に対して、ある道具を改造して作った放火器具だったという機械的なトリックだったように記憶している。私はこういう社会派的な主題を掲げた作風にはこういった本格ど真ん中のトリックはミスマッチなのであまり好きではなく、この頃は特にその傾向が強かった。その後同氏の吉敷シリーズを読み続けていくうちに、その抵抗も少なくなり、むしろこれこそが島田社会派の味わいだと思うようになった。後に読んだ島田氏のエッセイの中に、大仰なトリックは今では忌避されがちだが、昔の社会派と呼ばれる松本清張氏や森村誠一氏の代表作にも大胆なトリックが使われていたのだ、だから何もおかしいことはないのだという文章を読んでから、島田氏が意図的にトリックを採用していることを知った。 さて本作で開陳される弱者へのまなざし、そして江戸と現在の東京を比較した都市論はその後島田氏の作品で頻繁に語られることになる。今まで島田氏が東京という大都会に対して持っていた不満をぶつけた最初の作品だと云っていいだろう。御手洗シリーズでは見ることのない、渋みの効いた語り口を体験するにはうってつけの好編だとお勧めする。
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