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エミリー・L
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エミリー・L

マルグリットデュラス【著】, 田中倫郎【訳】

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 河出書房新社/
発売年月日 1988/12/20
JAN 9784309201207

エミリー・L

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2017/12/21

デュラスにとつて、書くといふことがどれほど生命を削る作業であったのか。愛人やエクリールを読んだ時から、感じてゐた。 このエミリーと呼ばれる詩人が詩人のエミリーだといふことはまつたく知らず、解説をみて調べてそれを知つた。しかし、たしかに詩人エミリーの姿を借りてはゐるが、この女性はデ...

デュラスにとつて、書くといふことがどれほど生命を削る作業であったのか。愛人やエクリールを読んだ時から、感じてゐた。 このエミリーと呼ばれる詩人が詩人のエミリーだといふことはまつたく知らず、解説をみて調べてそれを知つた。しかし、たしかに詩人エミリーの姿を借りてはゐるが、この女性はデュラス自身に他ならないと思ふ。 はじめは視界に映るただの景色であつた者が、段々と融けて混ざりあつてくる。そして書くといふことが生命と響きあふ。 ただ在る様に。けれど彼女はそこにことばを感じてしまふのだ。誰かとゐればゐるほど、より一層、強くことばを感じてしまふのだ。そのやうに彼女は生まれついてしまつた。それ故、彼女はことばをみせる。夏のうだるやうな暑さ、韓国人の与へた恐怖、酒の酩酊、やまない海鳴り。 おそらくディキンソンの詩の中に、デュラスは自分をみてしまつたのだ。さつと差す光は、身を焦がすほどに明るいといふのに、その熱はこの身を焼き尽くすほど強くない。それほどに、離れてしまつてゐる。哀しみの離れない日々の生活にあつて、何もかもがどうでもよくなつてしまつてゐるといふのに、まだ生きてゐる。そんなお互の姿を、光の中にみてしまつたのだ。 彼女をエミリーと名づけるのに、相当デュラスは惱んだのではないか。酒をコップを置き、目を閉じてその名前を繰り返し味はつてゐたかもしれない。彼女の名前をつげるあの場面。名前をつけてしまへば、もう物語は進んでいかざるを得ない。誰かの手にゆだねられ、解釈され、読まれる。デュラスにとつての作品とは、自分自身の身体に他ならない。

Posted by ブクログ

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