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タイピー ポリネシヤ綺譚 福武文庫海外文学シリーズ
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 福武書店 |
発売年月日 | 1987/03/16 |
JAN | 9784828830476 |
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タイピー
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タイピー
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1842年、捕鯨船の乗組員である「僕」は、船長の横暴に耐えかねて仲間の一人と共にポリネシアのマルケサス諸島のとある島で脱出を試みる。だが、険しい山あいを彷徨い歩いたのちに二人がたどり着いたのは、船乗りたちのあいだで人食い族と噂される〈タイピー〉の集落だった。軽妙な語りで絶体絶命の...
1842年、捕鯨船の乗組員である「僕」は、船長の横暴に耐えかねて仲間の一人と共にポリネシアのマルケサス諸島のとある島で脱出を試みる。だが、険しい山あいを彷徨い歩いたのちに二人がたどり着いたのは、船乗りたちのあいだで人食い族と噂される〈タイピー〉の集落だった。軽妙な語りで絶体絶命の冒険譚とポリネシアの人びとの暮らしを描き、彼らを「教化」しようとする白人たちへの痛烈な批判も込められたメルヴィルのデビュー作。 メルヴィルやっぱ好きかもしれない。『白鯨』も「古典の勉強のつもりで読んだけど普通におもしれーじゃん!」と思ったものだが、ブッキッシュな『白鯨』に比べると全篇がレポート風な『タイピー』はもっとわかりやすい面白さがある。 まず脱走劇が面白い。粉々になったあとタバコの葉と汗と一緒に丸まったビスケットを小さく小さく切り分けていくところ。谷へ降りるためにトビーが次々と離れ業を成し遂げて「僕」を鼓舞するところなど、ユーモラスで爽やかな冒険小説としての魅力があった。 だからトビーが退場してしまったのはショックだった。目次を見ていつ戻ってくるか確認してしまったくらい……。結局、足を悪くして自力で渚へでることができない「僕」は、一人でタイピーと呼ばれ恐れられる人びとと生活していくことになる。 実際は4週間だった滞在期間を3ヶ月に引き延ばしているというから、タイピーの村についてのレポート風な報告の数々も小説的に盛っているのだろう。とはいえ、「僕」は手厚くもてなされ、監視係兼召使いの《コリ・コリ》を案内役に村の慣習や文化を見聞し、村娘《ファヤワイ》との淡い恋まで経験する。「女はカヌーに乗ってはいけない」という《タプ》を異国人特権で破り、湖でファヤワイと船遊びをする一幕はこの本のなかでも屈指の幻想的な場面だ。 村に着くまではタイピーの恐ろしい噂に怯える自分たちを面白おかしく書いているが、《マー・ヘイオ》の家に迎えられてからはポジティブな記述が多くなる。彼の待遇は、彼が酋長の道化のような扱いだったせいではないかと私は思う。客であり、人質であり、ペットのような存在として受け入れられていたのではないだろうか。もしずっとあの島にい続けたら、《マーヌー》のように《タプ・カナカ》になっていたんじゃないかと思う。 「僕」はパンの実とココナッツの汁を合わせた食べ物がお気に入りなのだが、このパンの実が自生している森の様子を描くメルヴィルの筆はユートピストめく。労働と清貧を良しとするピューリタニズムとは真逆なポリネシアの採集生活。そこには宣教師たちによって「教化」されてしまったハワイやタヒチとの比較も含まれている。結局、彼はタイピーの集落から逃げたのだが、他者を「攻略」せずにはいられない西洋文明の闇には向き合い続け、『白鯨』を書くことになったのではないだろうか。
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