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愛しき者へ(上) 中公文庫
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愛しき者へ(上) 中公文庫

中野重治【著】, 沢地久枝【編】

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愛しき者へ(上) 中公文庫

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 中央公論社/
発売年月日 1987/05/10
JAN 9784122014206

愛しき者へ(上)

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2011/07/18

今から109年前の1902年1月25日、福井県坂井市に生まれた中野重治は、敗戦直後の3年間に日本共産党の参議院議員として政治家だったこともある詩人・小説家・評論家。 32年前の1979年に77歳で亡くなって、3回目の全集が筑摩書房から全28巻別巻1巻として1998年には完結して...

今から109年前の1902年1月25日、福井県坂井市に生まれた中野重治は、敗戦直後の3年間に日本共産党の参議院議員として政治家だったこともある詩人・小説家・評論家。 32年前の1979年に77歳で亡くなって、3回目の全集が筑摩書房から全28巻別巻1巻として1998年には完結していますが、図書館でもそれを揃えているところは少なく、一般的には残念ながら、今ではほとんど読まれることのない作家になってしまいました。 中野重治といえば本来的には『むらぎも』や『甲乙丙丁』を挙げるのが筋かもしれませんが、没後4年経った1983年に澤地久枝の手で編集されたこの未発表書簡集は、かつて持たれていた中野重治の堅いイメージがかなり払拭されて、今までとは比べようがないくらい広く読まれる契機になった気がするからです。 戦前に検挙されて官憲の拷問的な圧力に屈して転向したとはいえ、マルクス主義やプロレタリア文学運動にかかわり、敗戦後もかまびすしく政治と文学論争を展開して、文学の政治からの自立を唱えた硬派という風貌は、たった一冊のこの本でまったく違ったものに変わってしまったと思います。 戦争中に、あるいは獄中や旅先から母親や妻の原政野(まさの)【女優の原泉子、後に原泉と改名】に送った手紙の中の、けっしてフィクションに到ることのない、コーディネートされていない赤裸々な、愛情と思いやりと確信に満ちた言葉によって、完璧なまでに塗り替えられて、普通の私たちに一歩も二歩も近づいたという感じがします。 手紙のスペースは二段組で、そのあとに続いて、一段通しで2~4頁分の澤地久枝の思いを込めた解題が寄り添うという体裁で、それがまた絶妙なコントラストで、読む者をして劇中劇というかト書きを見たり読んだりするように、よりリアルさを増して感じるように読ませてくれます。 実は私が中野重治に出会ったのは、中3のときに読んだ「愛の詩」という詩からなのですが、ですから編者の澤地久枝が自著『別れの余韻』の中で、同じようにやはり中野重治との出会いが19、20歳のとき読んだ「おまえは歌うな」という彼の詩だったこと、自分が弱気になって、しっぽをまいて逃げだしそうになる時に引き止めるようにしてもらったことなどを書いている箇所を読んで、それまで漠然と何冊かの彼女の本を読んできただけでしたが、いっぺんに好きになって全著作を集めて読むようになったのでした。 この上巻だけでも435頁ある延々と続く単なる手紙の束ですが、けっしてどんな小説やドラマにも負けない、家族愛に満ちた、勇気と希望が湧き、小さな幸せを見つめるほのぼのとした気持の大切さを自覚し、絶望の底から這い上がっていく人の強さに目を見はり、そしてあきれるばかりのメロメロのメロドラマに嫉妬するような感動いっぱいの本です。

Posted by ブクログ

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