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移りゆくこの十年 動かぬ視点 日経ビジネス人文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 日本経済新聞社/ |
発売年月日 | 2002/06/01 |
JAN | 9784532191313 |
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移りゆくこの十年 動かぬ視点
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本書は二部構成になっている。 第Ⅰ部「スタンフォードと京都のあいだで」は、1990年1月から12月まで筑摩書房の「ちくま」というPR誌に連載され、後に単行本となったエッセイである。 第Ⅱ部「霞が関とシリコン・バレーのあいだで」は、筆者が2001年7月から12月まで、「日本経済新聞...
本書は二部構成になっている。 第Ⅰ部「スタンフォードと京都のあいだで」は、1990年1月から12月まで筑摩書房の「ちくま」というPR誌に連載され、後に単行本となったエッセイである。 第Ⅱ部「霞が関とシリコン・バレーのあいだで」は、筆者が2001年7月から12月まで、「日本経済新聞」夕刊に、週に1回書いていた「あすへの話題」というコラム、および、その他に筆者が発表したりしていた文章を集めたものである。 筆者は、世界的な経済学者である。特に「制度経済学」と呼ばれる分野においてはパイオニア的な位置づけにある。残念ながら2015年に亡くなられたが、大変な業績をあげられた方だ。 第Ⅰ部「スタンフォードと京都のあいだで」は、筆者が京都大学で、そして、スタンフォード大学で研究をされ、教師をされており、両所の間を往復しているときに書かれたものである。1990年というのは、バブル経済のピークの頃であり、「日本的経営」が世界中、特にアメリカで注目を集めた時期である。 このエッセイの中でも何カ所かで触れられているが、当時の経済学者の間では、日本の経営なり経済の仕組みが何故、競争力があるのかということが学問的関心事になり始めていた頃のようで、筆者もハーバードで話す機会を得る等していたということがエッセイに書かれている。 筆者の専門である「制度経済学」は、もともとは、社会主義経済と資本主義経済の間のシステムの違いを研究する学問であったようだ。社会主義経済では生産活動を行うための情報は国が一元的に管理し、それに基づいて各現場で生産活動が行われるのに対して、資本主義経済では、情報は価格を中心としたシグナルとなり、市場で得られるものであり、そのシグナルに基づいて各企業が生産活動を行うというモデルが考えられていて、あるいは、その他の付帯する社会制度などを含めて、両者の優劣が論じられていたようである。ところが、この頃になると、ソ連をはじめとする東側諸国の経済が崩壊状態であったことが徐々に明らかになり、社会主義と資本主義の優劣を大きなテーマの一つとする「制度経済学」は経済学者の興味の中心からはずれていったようである。しかし、筆者は、「比較制度分析」という考え方を使い、制度比較をすることにより、社会主義と資本主義といった体制の違いばかりではなく、アメリカと日本といった国の経済パフォーマンスの違いを説明できるはずだと考え、実際にそれに取り組んでいったのである。 これによって、日本経済や日本的経営の仕組みは、日本の歴史や国民性に根づいた「特殊で一回限り」というものではなく、ある種の経済合理性を持つものであること、しかし、その経済合理性は経路依存性があるものなので、前提となるものが変わると、経済合理性も変わってしまうといったことを考えた人である(私の理解では)。私は大学院で人事管理、特に「日本的人事管理」に近いことを修論のテーマとして考えているが、この分野では、典型的な「日本的人事管理」は、ある時点では合理的な制度であったが、今もそうとは限らないという議論が当たり前になっており、それは、筆者の考えそのものでもある。 とても優秀な経済学者であったであろうことが、読むと分かる。また、学者としては非常に美文を書かれる方である。上記のような学問的な話ばかりではない日常的なことも書かれており、とても面白く、かつ、読み応えのあるエッセイ集であった。
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