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コラムの逆襲 エンタテインメント時評1999~2002
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 新潮社/ |
発売年月日 | 2002/12/20 |
JAN | 9784103318255 |
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コラムの逆襲
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落語によく出てくる人物に横町のご隠居というのがいる。八つあん、熊さんあたりに、ご高説を宣う好人物である。とにかく、歳をとっているだけに、昔のことをよく知っている。今で言うリアルタイムで経験しているのだから、「今時の若い者は」とやられると、こちとらは、もういけない。ただただ拝聴、謹聴するしかないというわけだ。さしずめ、エンターテインメント界における小林信彦の位置がこれだ。 何しろ、東京は青山の菓子屋の息子に生まれ、江戸落語は言うに及ばず、戦中戦後の映画をリアルタイムで見ている。さらに、浅草の軽演劇から創生期のTV界に至るまで、その内部と外部を往き来し、事情に詳しいのはいうまでもない。ヒッチコックマガジンの編集者でもあり、中原弓彦の筆名で『日本の喜劇人』という本を出している御仁である。エンタメ界の水戸光圀か大久保彦左衛門。ひとたび口をきけば、なかなかうるさい人物である。 小林信彦のコラムの特徴は、江戸っ子らしく歯切れのいいところと意外に蓮っ葉なところ。好悪がはっきりしていて、お気に入りの役者や噺し家については一家言を持つが、そうでないことについてはあっさり切り捨てて顧みないところ。一例をあげるなら、噺し家ではこの間惜しまれつつ早逝した古今亭志ん朝。現役の女優なら、アシュレイ・ジャッドとニコール・キッドマン。TVドラマなら「アリー・myラブ」。これらについては繰り返して語ってやまない。 つまり、評価の基準が「自分」にあるのだ。それは、何があっても揺るがない。それだけに、はまれば、おもしろいことは無類だが、いったん外れるとなると、もういけない。エンターテインメントは生(なま)ものである。小林が得意とする分野、例えば、江戸落語、アメリカ映画、ミュージカル等については、安心して読めるのだが、現代のTV番組となると、横町のご隠居風のところが鼻につく。まあ、そうは言うものの、この人の書くものは飽きもせずチェックしているのだから、こちとらも同じ横町に住むハチ公、熊公の類なのだろう。 「はじめに」にこうある。「二十一世紀に入って、意外にキナくさくなってきた世界。そして大衆文化の80パーセントはがらくたであるにせよ、光るものがある20パーセントをひろい上げ、クロニクルとして定着させようというのが、このコラムの狙いなのです」。きれい好み、本物好みの小林(先に述べた例からも分かってもらえるだろう)が、二割拾い上げているのが意外と言えば意外だが、ここいらは少し点が甘い気もする。林家正蔵一門の(クライ)ネタを寄席で聞きながら、年の暮れの気分を味わうというのが、この人ならではの暮れの風物詩とか。近くに寄席などない地方では、TV、ラジオ、その他で自分なりの年の暮れの気分を演出するしかない。そういう時のガイドとしては重宝な一冊といえよう。
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