金日成長寿研究所の秘密 文春文庫

金素よん(著者), 吉川凪(訳者)

• 販売会社／発売会社: 文藝春秋/
• 発売年月日: 2002/03/10
• JAN: 9784167651220

商品レビュー

2022/04/26

2000年に韓国で出版されたもの。2002年に日本語版出版。

著者は変わった経歴の持ち主で、幼い頃、出身成分の良い家庭にこっそりと養子縁組をし(戦後の混乱によってそれが可能だったという)、後に医者となる。保衛大学に招集されて工作員としての訓練を受けてさまざまな任務を行ったこと、金日成の健康のための研究を行う長寿研究所で働いたことに関するエピソードが紹介されている。

工作員としての仕事としては、北朝鮮に帰還した在日で北朝鮮に対する不満が多いという女性に近づき、彼女の全てを報告していたことが書かれている。筆者にもその女性に何かしら大きな「問題」があるのかどうかまではわからなかったようだが、後にその女性はスパイとして処刑されたことがわかったという。
その他、訓練や任務の際に性ホルモン抑制注射を打たれたこと、工作員は結婚をしないことを誓約させられたことなどが書かれている。著者は女性であるためか、工作員として人生を捧げた割に、大きな仕事を任されないまま歳を取り、しまいには変節した工作員としては思想調査を受けるハメになる。

92年に40代で韓国に亡命して、韓国での苦労なども書かれている。
タイトルとなっている長寿研究所については多くが語られているわけではないが、「自然のもの」「体にいいもの」にこだわる金日成のために、多くの人が人生を捧げ、また怪しげな食品を作り出している異様な雰囲気が伝わってくる。こうした取り組みは現在も行われているのか・・・それを知ることはかなわない。