5万ドルの赤ちゃん お嬢さま探偵ループの事件簿 新潮文庫

C.ガルシア・アギレーラ(著者), 加藤洋子(訳者)

• 販売会社／発売会社: 新潮社/
• 発売年月日: 1997/10/01
• JAN: 9784102026212

商品レビュー

2012/07/04

マイアミのキューバ系アメリカ人社会を舞台にした探偵もの。副題にお嬢さま探偵とあるけれど、主人公は独立独歩の女私立探偵でハードな仕事の合間に男との関係も楽しむ事ができるという良い意味でお嬢さまというイメージから逸脱したハードボイルドチックな作品になっている。なにより作品全体に漂うキューバ系アメリカ人の祖国キューバへの複雑で熱い想いがいい。

2011/08/31

大富豪のご令嬢は女探偵。
今度の依頼は骨髄移植のために養女の産みの親を探してくれと言うもの。養子を斡旋した弁護士を追求するが事態は複雑化し…。

アルマーニとカルティエで身拵えし…などと裏表紙に描いてあったり、タイトルがタイトルだったり、表紙が困難だったりするけれど、全部このミステリには逆効果になっているところがなんとも。
主人公のループはなかなかハードボイルドで、仕事も男も楽しんでいる。
必要とあらば女の魅力を振りまくことも厭わない。
ただひとつしないのは、札びらで事件を解決すること。
悩んで、苦しんで、事件に立ち向かう様は本当に普通の女探偵だ。キンジーや、ヴィクとなんら変わりはない。
この話し、キューバからの脱国者社会が中心になっていて、事件にも大きく関わってくる。
ループの両親もキューバからの逃亡者で、ループもその姉妹もその土地を踏んだことはないけれど、故郷への熱い思いは持っている。
このあたりの描写がなかなか興味深く、お嬢様とか5万ドルの赤ちゃんとか霞んでしまった感がある。
こちらの方をもっと前に押し出した方がよかったんじゃないかと思う。
筒井康隆氏の「大富豪刑事」を期待して読むとがっかりするだろう。
事件の骨格自体は割合早いうちにわかるけど、ループとのちに相棒になる肝っ玉母ちゃん（妊娠後期ｗ）の活躍を十分に楽しんだ。