奇蹟 風聞・天草四郎

立松和平(著者)

• 販売会社／発売会社: 東京書籍
• 発売年月日: 2005/04/08
• JAN: 9784487798698

商品レビュー

2015/12/12

ノミ，虱，ダニに語りをさせるのがいいのか悪いのか，個人的には良くなかった，が史実に真剣に取り組んでおられて，キリシタンの殉教への憧れというものが，貧しさの中で浮かび上がってくる様子がよくわかる．

2012/12/16

文学でなければできない、隙間の闇を埋めていく仕事。
あとがきにこう書かれているこの言葉が、まさにこの作品を象徴しているように思った。歴史的に見て、非常に興味をそそられる島原の乱。そして、天草四郎時貞。宗教的な背景を伴ったこの農民一揆を、著者は集団心理の伝播という側面でとらえているように思える。もしくは狂信のゆえの転落経過描写とでも言おうか。思い出すのは著者の傑作「光の雨」である。連合赤軍の経過を辿ったあの作品と、この「奇蹟」は、時代こそ違え、見事にリンクしている。立松和平は、ニュース番組で桜を中継していた朴訥とした印象にも関わらず、その筆のうねりは凄惨極まりない。
物語の狂言回しとしてノミやシラミに語らせる、といった手法が斬新。
天草四郎時貞の内面描写はあまりないが、この作品の主眼はそこにないので、それはマイナス要因ではないだろう。

2008/02/14

島原の乱・天草四郎については何回も読んだり観たりしてきたが、百姓一揆とキリスト教、キリシタン大名小西行長の結びつきがよく分かった。
「一揆に参加し篭城した者はすべて救われる。これがこの城で起きた奇蹟なのだ。」
読みながら、自爆テロに走るアルカイダ・イラク・パレスチナ・スリランカの若者たちのことが頭に浮かんだ。
　次には幕府の側から見た「島原の乱」を読んでみたい。