メディア裏支配 語られざる巨大マスコミの暗闘史

田中良紹(著者)

• 販売会社／発売会社: 講談社/
• 発売年月日: 2005/03/10
• JAN: 9784062128346

商品レビュー

2011/02/21

古本屋で買ったこの1冊に書かれた時より、状況は一向に好転していない。
かつて地域ラジオ局で職員をやっていた時、市議会の内容を今風に言えば「コンテンツ」として放送に利用するべく、記者の採用を社内で検討したことがあった。
市議会の生放送は、地域ラジオ局でも、ケーブルテレビ局でも、収支目論見書の段階では書かれているのに、開局するとなぜか構想すらなくなる不思議な存在である。これは鹿児島のブログ市長のような人がオカミにいるからなくなるのではない。実は、既存の記者クラブに地域系電気通信メディアが参加できないことに起因している。
実際参入を申し出たところ、詳細は不明だがかなり難しい条件を言ってきたようで、結局その構想は消えてなくなったが、社内紛争のときには面白がってすり寄ってきた某紙の記者が、この一件の時期だけはなぜか来局すらしなかった上に、僕がこのネタで質問すると何も答えなかったのを今でも覚えている。
地域ラジオ局の事業収入が上がらないひとつの原因として、霞が関と同じ問題が地方にもあるのだよ。
だからと言って、他者をけなしてコメを買うような新潮や文春系がしゃしゃり出てくる危険を感じる自由報道協会にメディア改善をゆだねるのは正直いやだなぁ。

2008/11/21

東京放送（TBS）にて『報道特集』などの番組を手掛けた田中氏のジャーナリストとしての人生が淡々と描かれている。新聞は「記者クラブ」というギルド社会に安住し、真実を追いかけない。テレビは、視聴率の名のもと、ニュース番組ですら低俗的な内容のものを垂れ流ししている。

政治家、官僚が、如何にしてマスメディアをコントロールし、国民に彼らの都合の良い現実を信じ込ませているか。マスコミは、マスコミで、「報道の自由」などを声高に叫んでいるにもかかわらず、権力にすりより、飼いならされ、またそのぬるま湯に安住するばかりか、自ら自身の存在意義すらをなきものにしている。

われわれは、大新聞やテレビ局の報道が、ついつい『正論』を語っていると信じ込んでしまうが、それを信ずる姿勢が実は非常に怖いことを気付かせてくれる。