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オランピアの頸のリボン
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オランピアの頸のリボン

ミシェルレリス(著者), 谷昌親(訳者)

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オランピアの頸のリボン

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 人文書院/
発売年月日 1999/06/30
JAN 9784409130247

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2011/07/08

『「でも、きみが白と言ったり、黒と言ったりする。はいと言ったり、いいえといったりする、とにかく頭に浮かんだことを片端から言うとすると、いったい何をいいたいことになるのだろうね?」「まず言いたいのですよ。とはいっても、気に入ったことはなんでも話しますけどね」』 『サラニ別ノ現実ハ...

『「でも、きみが白と言ったり、黒と言ったりする。はいと言ったり、いいえといったりする、とにかく頭に浮かんだことを片端から言うとすると、いったい何をいいたいことになるのだろうね?」「まず言いたいのですよ。とはいっても、気に入ったことはなんでも話しますけどね」』 『サラニ別ノ現実ハタトエぴんせっとニテモフレルベカラズ」カナリ気ノイイ娘ノゴトキ現実ヲ追イ求メ接触シせっくすセヨ」』 たとえば、ある一つの言い訳をしたとする。その言い訳が良くできたものであってもそうでなくても、言い訳をした後には何かくすぶったような気持ちが残る。嘘をついているとかいないとかではなく。熾きてしまったものはずっとくすぶり続けるだろう。そんな時どうするべきなのか。 ミシェル・レリスのこの散文集のような、あるいは日記の断片のような文章群は、ある意味で、そのひたすらにくすぶり続けるものに対する答えを追い求める精神の記録であり、書くことによる精神的なセラピーのカルテ(あるいはそれは残骸と呼ぶべきかも知れない)のようなものと思える。 ここに記載されている事実の多くは過去のできごとであり、書きつける視線は過去へ向かうそれであって、いやがうえでもその「言い訳」染みたニュアンスが滲み出る。そしてタイトルにある一つの装飾品、執拗に言及されるオランピアの頸のリボンに対する考察。それは既に絵画のキャンバスの平面を突き抜けて、脳の中にインプリントされたイメージを撫でまわしている。つまり、その絵は既に動かない布地の上に定着されたものではなく、脳の灰色の細胞の上に転写され、自在に拡大され、視点を移され、動かない筈のオランピアの動きすら観察され得るものとして存在している(だから添付されたその絵を読者は余り度々見返してはならない)。その執着は、何もない白い空間にすら何かが存在しているのではないかと疑い、そうやってタガを外されることで暴走しているかのようにすら見える。 オランピアの表情の変化すら読み取ろうとする試み、そんなこだわりの底にあるものの正体を、凡人である自分は理解しようもないけれど、時折吐き出されたように書きつけられるアフォリズム的文言の中に何かが存在しているような気にはなるのである。それは短い文章ゆえの過ぎたる解釈(動かない筈のオランピアの動きを読み取ろうとする観察と似たところがありはしないか)なのかも知れないが、それこそがレリスがこだわり続けた理由なのでは、と思ってみたりする。つまりそのこだわりは、何もない筈なのに何かが浮かんでくることのメカニズムを知りたいという行為、レリスがレリス自身の中にある不思議を読み取ろうとする行為、と言ってもいいのではないだろうか。 それが普遍的な真実であるか否かは、もちろん、別として。

Posted by ブクログ

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