いま『武士道』を読む 21世紀の日本人へ 丸善ライブラリー

志村史夫(著者)

• 販売会社／発売会社: 丸善/
• 発売年月日: 1999/08/20
• JAN: 9784621052990

商品レビュー

2020/07/04

『武士道』引用後の解説で、著者の「戦後の四大主義（民主主義、人権主義、平等主義、絶対平和主義）」嫌いのリフレインが鼻につき、最後は『武士道』の引用部分だけ読みたくなる。残念。

2012/07/29

今年で生誕150年になる新渡戸稲造が英語で著し、多くの欧米人にも読まれてきた『武士道』。国際人の新渡戸が日本人の精神や哲学をまとめ、世界に放ったこの名著を見直そうという動きがあるようなので（特に地元）、読んでみた。文語体で書かれた著書を解説してくれるので、初心者としてはありがたいが、この著書をネタにして戦後社会が産み出した悪しき「四大主義」の批判に行き着いてしまうのはやや違和感。それがこの本の著者の主張であっても、右とか左とか関係なしに武士道を眺め、現代にどう取り入れていくかという本があれば、それを読みたいな。

2012/03/08

現代の「礼節を失った日本人」を嘆く著者が新渡戸稲造の武士道を解説し、かつて日本人はこうで誇り高き人々であったのだと情熱的に現在を痛切に非難しながら語るのだが、非常におもしろい。著者は原因を戦後の民主主義、平等主義、人権主義、絶対平和主義だと言い切る。これは「日本人として」を考えさせられる。武士に求められる徳目は忠誠、犠牲、信義、廉恥、礼儀、潔白、質素、倹約、尚武、名誉、情愛と多岐にわたる。現代において、才能ある人がその分野とは違うところでなにか不具合があると徹底的に叩かれて非難を浴び、辞さざるを得なくなるというのも武士道精神の痕跡かもしれない。資本主義社会であるのに関わらず「儲ける」ということにある種の疚しさや卑しさを感じてしまうのも自らの血のどこかに武士道の清貧が残っているのだろうし、商人の血は混ざってないようである。
人権は世界共通である必要はなく、国ごと、文化ごとに違うべきであるというのも、かなり思うところがあった。というのも世界的に死刑をなくそうする動きの中で欧州では廃止しても犯罪は増えなかったというデータも根底の文化が違うというのが盲点であった。今後あらゆる方面で日本が辿る道は明暗を分けるだろう。そんな中で大阪で真のエリートと言える強いリーダーが出てきた。維新の会というのも、まさにそれとかぶる。三島由紀夫は「世界を変えるのは認識ではなく、行為である。決して認識ではない。」と言った。現在のこの時代の転換点ともいえる動きの中で、この本に巡り合い、武士道に触れ、背筋が、すっと伸びた。ぼくの中のサムライがぼくを熱くさせる。決して保守的ではない武士道。こんな時代だから過去を振り返って、自らに「日本人」というのを問い直すべきなのかもしれない。