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極北 コルィマ物語
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極北 コルィマ物語

ヴァルラームシャラーモフ(著者), 高木美菜子(訳者)

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極北 コルィマ物語

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 朝日新聞社
発売年月日 1999/03/05
JAN 9784022573513

極北 コルィマ物語

¥3,355

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2019/12/06

シャラーモフ(1907~82)を初めて読みました。 ソビエト連邦時代の小説家です。 辺見庸さんの「水の透視画法」に出てきて、さっそくアマゾンで検索。 代表作「極北 コルィマ物語」が中古品でありました。 値段を見ると、1万2800円(!)。 とても貧乏人のサラリーマンには手が出ませ...

シャラーモフ(1907~82)を初めて読みました。 ソビエト連邦時代の小説家です。 辺見庸さんの「水の透視画法」に出てきて、さっそくアマゾンで検索。 代表作「極北 コルィマ物語」が中古品でありました。 値段を見ると、1万2800円(!)。 とても貧乏人のサラリーマンには手が出ません。 というわけで、図書館で借りて来ました。 熟読玩味しました。 自身が収容所で体験した事実を元にした短編が、6つのシリーズに分かれて150編以上収められています。 過酷な出来事がつづられていますが、ただちに悲惨という印象はほとんど受けません。 むしろ誌的でどこかのんびりとしており、それが逆に収容所という特異な場所、その残酷さを浮き彫りにするから不思議です。 辺見も引いていましたが、たとえば、こんな描写に思わず引き込まれます。 「ひとは無から生まれてきた。ひとり、またひとりと。夜、見知らぬ男が板寝床の隣に横たわり、骨ばったわたしの肩にもたれかかる。体温を、ひとにぎりの温かみをわたしに与え、わたしからも奪っていく。」(「センテンツィア」) 思わず息を呑む描写。 「文学とは何か、1文だけ例示せよ」と言われたら、ぼくはこの1文を提示します。 収容所という極限の環境下で、人はどうなるのか。 作家の観察眼は実に鋭いです。 「収容所では誰もが自分を実際より年かさに、弱々しく見せかけようとする(成功しないわけでもない)。それは必ずしも計算ずくではなく、本能的なふるまいだ。ここでの人生の皮肉は、非力な年寄りに見せかけようとするものの半数以上が、見せかけようとしているよりもずっとひどい状態に達している。」(「使徒パウロ」) 人間性をとことん蹂躙する収容所の中でも、シャラーモフは「詩の力」を信じています。 こんな文章が印象に残りました。 「わたしにとっての最後の救いは詩であった。自分以外の詩人の、お気に入りの詩のいくつか。ほかのものは遠い昔に忘れ去られ、うち捨てられ、記憶から抹殺されたにもかかわらず、詩は驚くほどに思い出された。詩だけは、披露にも、厳寒にも、飢えにも、際限のない圧力にも屈しなかった。」 収容所での体験を元に作品を書いた作家と言えば、私の大好きな石原吉郎がいますが、石原よりも作風がいくらか明るい感じがしました。 最後に「センテンツィア」から。 「愛が蘇るのは、ほかの人間らしい気持ちがすべて戻ってからのことだ。愛は最後にやってくる。愛は最後に蘇る。」 1万2800円か……買おうかな。

Posted by ブクログ