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潤一郎ラビリンス(12) 神と人との間 中公文庫
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潤一郎ラビリンス(12) 神と人との間 中公文庫

谷崎潤一郎(著者)

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潤一郎ラビリンス(12) 神と人との間 中公文庫

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商品詳細

内容紹介 内容:神と人との間. 既婚者と離婚者. 鶴唳
販売会社/発売会社 中央公論新社/
発売年月日 1999/04/18
JAN 9784122034051

潤一郎ラビリンス(12)

¥715

商品レビュー

3.5

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2022/02/17

 本書のほとんどを占める長編「神と人との間」は1924(大正13)年発表。他の二つは大正6年と大正10年。  昔から谷崎潤一郎は大好きで、一時湖はこの中公文庫の「潤一郎ラビリンス」というアンソロジーを集めて読みまくった。全16巻のうちあと3冊だけ欠いていたことを思い出したが、その...

 本書のほとんどを占める長編「神と人との間」は1924(大正13)年発表。他の二つは大正6年と大正10年。  昔から谷崎潤一郎は大好きで、一時湖はこの中公文庫の「潤一郎ラビリンス」というアンソロジーを集めて読みまくった。全16巻のうちあと3冊だけ欠いていたことを思い出したが、そのうちの1冊は入手困難になっていて中古の文庫1冊なのになんと3万円の値がついている。それ買うくらいなら古本で谷崎潤一郎全集を買った方がいいだろう。  さて表題作は、谷崎が関わった有名な恋愛・夫婦スキャンダルの実体験をもとにフィクション化された作品で、それというのは、谷崎の奥さんを詩人の佐藤春夫が思慕しているが谷崎は愛人にかまけているにも関わらず離婚しようとせず、谷崎と佐藤春夫のあいだにはげしい葛藤が生まれた、ということである。これは当時の文壇でも非常に有名な話だったらしい。最終的に谷崎は奥さんと離婚し、夫人はその後佐藤春夫と結婚して一件落着、となったようだが、本作発表の時点ではまだそこに至っていない。  本作はおおむね佐藤春夫をモデルとした「穂積」の視点で描かれる。谷崎は「添田」となっていて、文壇で「悪魔主義の驍将」などと呼ばれている辺り、谷崎そのものである。  すると、谷崎は佐藤春夫という他者のまなざしで自己を観察しその心理を推測する、というややこしい自我構造が現出しており、それがなかなか面白い。  穂積の心理は克明に描かれ、他者としての添田の心理も、かなり詳細に推測されている。その詳細さがまるでフランス心理小説のような作品であるが、谷崎の理屈っぽい一面がよく表れている。  そうした中で、他者への嗜虐という、谷崎文学得意のテーマが立ち現れる。この嗜虐は性的な嗜好であるとともに他者の全人格を否定し愚弄するような凄絶な意識の情動的痙攣でもある。そこではサディズムもマゾヒズムも分かちがたく結び付いているが、さらに、「自己」と「他者」をめぐる関係性の異様な緊張をもたらす高度な芸術文学的境地を示してもいる。  実際の出来事の推移や人物の台詞、佐藤春夫の心理がどうであったかは調べてみないと分からないが、これは完全にフィクション化したものだと想像する。つまりあくまでも「小説」であって、谷崎潤一郎の作品である。  モデル問題という、肖像権などもあまり問題にならなかった時代の小説とは言え、実在の人物を勝手気ままに描出するこの書き方は、倫理的にはかなりまずいことなのは間違いない。しかしこのようなえげつなさの演示それ自体が、いかにも谷崎文学ではある。  とりあえず小説としてなかなか面白いことは間違いない。

Posted by ブクログ

2021/01/09

谷崎潤一郎は、小説の登場人物に自分を重ね これを象徴的に罰した それが彼のデカダンスだった そうすることで、現実の自分が許されると思っていたところは あったかもしれない それが例えば、奔放な女の奴隷になる「痴人の愛」であり 好きな女と結ばれぬまま死んだ「蘆刈」であり あるいはこの...

谷崎潤一郎は、小説の登場人物に自分を重ね これを象徴的に罰した それが彼のデカダンスだった そうすることで、現実の自分が許されると思っていたところは あったかもしれない それが例えば、奔放な女の奴隷になる「痴人の愛」であり 好きな女と結ばれぬまま死んだ「蘆刈」であり あるいはこの、「神と人との間」であった 谷崎のそういう、自分のエゴを悲劇的に美化して描く手法に 芥川龍之介などは密かな憧れを抱きつつ 一方では、強い嫌悪も感じたのではないだろうか この作品は、佐藤春夫とのトラブルを題材にしたものだ 穂積(佐藤春夫)が勝手に女を諦め 添田(谷崎潤一郎)にこれを譲ったことが騒動の発端である 女としては添田に操を捧げつつ 穂積の初心をも尊重しているわけだけど 添田の暴力と乱れた交遊が、ふたたび穂積を巻き込んで 一大スキャンダルに発展していくのだった 穂積に強さがあったなら そこまで関係が拗れることもなかっただろう しかしあいにく、穂積は精神を病んで弱気になっていた 佐藤の優柔不断と谷崎のサイコぶりが ありのままかどうか知らんけど描かれる序盤のやりとりには かなりの緊迫感がある ただ終盤は様式化されており、それを陳腐と見る向きもあるだろう なお、発表の時期はちょうど芥川が神経を病み始めた頃に重なる 「悪魔主義」というより、露骨に悪意を出した作品と見えて 背景を知りながら読み進めていくのは辛いが まあ、佐藤春夫もこのトラブルを題材にした作品は出してるので 一種のプロレスだった可能性もあるだろう また、これを掘り下げていった結果が 「猫と庄造と二人のおんな」になったのではないか

Posted by ブクログ

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