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長篇詩 炎える母
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 日本図書センター |
発売年月日 | 2006/01/25 |
JAN | 9784284700023 |
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長篇詩 炎える母
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昭和二十年五月二十五日夜、B29が投下した焼夷弾に燃え上る炎の海のなかを母と手をつないで逃げ惑っていた詩人は、いつしか母の手を放してしまう。 そして、詩人は燃えさかる炎のなかに母を置き去りにした。 林静一『モモコさんと僕』の「僕」のように、母の保護者になるとうそぶいていた僕は、...
昭和二十年五月二十五日夜、B29が投下した焼夷弾に燃え上る炎の海のなかを母と手をつないで逃げ惑っていた詩人は、いつしか母の手を放してしまう。 そして、詩人は燃えさかる炎のなかに母を置き去りにした。 林静一『モモコさんと僕』の「僕」のように、母の保護者になるとうそぶいていた僕は、病院の閉ざされた部屋に母を一人置き去りにした。 五十年前にはじめてこの詩集を読んだとき、いずれはこの詩人と同じことを自分自身がしでかすということを、僕は既に知っていたような気がするのだ。 詩人の建てた母の墓の前に、しばし佇んでいたい。/ ◯「おじいちゃん、死んじゃったの?」と 真夜中に 小さき母の 巨きなる影 ◯生きるには あまりに弱き 者なれど 老いたる母の 世話に生かさる ◯「帰りたい」 「電話をくれ」と 母の呼ぶ 四十七の 留守電を聴く ◯五十キロ 延々伸びたる へその緒で 小さき母の 心音を聴く ◯病室の 閉ざされしドアの その中に 箒もて吾を 追いし人あり ◯後部座席の ドアを開ければ 立ちあがる 母と暮らした 黄金の日々/ 【「走っている」 その夜 14 走っている 火の海のなかに炎の一本道が 突堤のようにのめりでて 走っている その一本道の炎のうえを 赤い釘みたいなわたしが 走っている 走っている 一本道の炎が 走っているから走っている 走りやまないから走っている ー中略ー 走って 走って いるものが 走っていない いない 走って いたものが 走っていない いない いるものが いない 母よ いない 母がいない 走っている走っていた走っている 母がいない ー中略ー 母よ あなたは 炎の一本道の上 つっぷして倒れている 夏蜜柑のような顔を もちあげてくる 枯れた夏蜜柑の枝のような右手を かざしてくる その右手をわたしへむかって 押しだしてくる 突きだしてくる ー中略ー 走っている とまっていられないから走っている 跳ねている走っている跳ねている わたしの走るしたを わたしの走るさきを 燃やしながら 焼きながら 走っているものが走っている 走っている跳ねている 走っているものを突きぬけて 走っているものを追いぬいて 走っているものが走っている 走っている 母よ 走っている 母よ 炎えている一本道 母よ 】(本書)
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