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フランス・ルネサンス王政と都市社会 リヨンを中心として
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 九州大学出版会/ |
発売年月日 | 2006/01/25 |
JAN | 9784873788968 |
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フランス・ルネサンス王政と都市社会
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著者は、R.シャルチエが「都市に対する国家の支配という側面を明らかにするには、常に17世紀に遡るべきであり、16世紀ではない」と明言して以降、「中世都市と近代産業都市の狭間」に位置する都市共同体について、これまで目立った議論がなされてこなかったと指摘する。その固有の歴史的性格があると仮定して、ではどのようにしてその存在を把握することが可能となるのか。この難題を解くために、著者は「『良き都市』の発展」という現象をリヨン市を例に観察する。 「良き都市」とはなにか。定義は非常に曖昧で、時代によって多少異なるらしい。いずれにせよ、「自衛できる軍事力と自治権を有し、法的・財政的に周辺地域の首府としての役割を果たしていること、それから宗教上の拠点でもあること」が共通する。 従来の都市史では、都市共同体は、「都市民の間の横の連帯と支配の縦の関係という構図で理解されてきた」。しかし、「良き都市」と王権の関係はときに互恵的であり、たとえば、財政難にあえぐ宮廷は「良き都市」に税を課すことによって態勢を保ち、「良き都市」はそれと引き換えに都市特権を保障されたようである。王権と都市の蜜月がつづくうちは、リヨン市は商業の一大都市として発展する。 しかしながら、度重なる税の支払いに当然都市財政も貧窮し、リヨン市の場合は市政役人が自弁する。このような場当たり的行政が長続きするはずもなく、宗教戦争期を経て、都市行政の担い手たるブルジョワが没落したり、都市を離れたり、あるいは国王役人として上昇し、都市共同体は形骸化してしまう。「良き都市」の衰退は、中央集権的な近代国家の誕生をよく説明する。 王権と「良き都市」の相互関係がいかなるものであったのか、著者はおもに移動宮廷や入市式にみられる政治文化によってこれを明らかにしようと試みる。とくに入市式についての小論が興味深い。著者曰く、入市式はヴァロワ朝期になってから積極的な政治的意味を持つようになる。国王は「良き都市」との関係強化のために、都市は都市特権の確認及び増大を懇願する機会として入市式は機能する。 16世紀の入市式には、必ず「出迎えの儀」がある。国王といえど、市壁内に足を踏み入れたくばこの儀式に臨まねばならない。入市門で国王一行を迎える都市代表団は、まず市門の鍵を国王に呈示し、忠誠の宣誓を行う。そのかわりに、都市特権の容認を求める。たとえば、アンリ2世のリヨン入市式の際は、都市の鍵の保持や商業特区としての優遇措置、自衛権の保持が国王に対し要求された。概ね以上の要求は通ったようである。「出迎えの儀」はけっして形式的なものではなく、履行されるべき契約の場として機能している。 著者も指摘することだが、入市式には度々「鍵」が重要な役割を担う。シャルル9世のトゥルーズ入市式では、4つの鍵ー刑務所、市庁舎、金庫、市門ーが国王に呈示されるが、これは都市の司法権、行政権、財政権、自衛権、すなわち都市自治権の象徴であり、都市の鍵の保持は重要な都市特権のひとつであったことがわかる。 16世紀パリ市に詳しい高澤紀恵氏によれば、パリ市の場合、鍵は通常市門の番人が保管するが、緊急時には街区長が管理する。これは個人的な関心についてだが、聖バルテルミーの夜、王権は都市特権を侵すことはなく、市政役人を介してしか鍵を掌握しえなかった。鍵の所在の変遷を追うことで、あるいはあの酷い日の新たな側面を見出せるだろうか。 同じころのリヨン市は、職能団体が行政の基本細胞であった。パリ市の市参事会も、もとをたどればギルドにゆきつく。職能団体から街区へ、対外戦争や内乱による治安悪化が、近隣関係の濃密な街区による監視を生む。街区ごとに実施される住民調査は、やがて来たる絶対王政の戸籍掌握の足がかりとなる。パリ市に遅れてリヨン市も、16世紀末ごろに街区の存在感が増すようになる。それは「良き都市」の衰退に符合する。都市を比較することも有益となろう。
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