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キャパ その死 文春文庫
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キャパ その死 文春文庫

リチャードウィーラン(著者), 沢木耕太郎(訳者)

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キャパ その死 文春文庫

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 文藝春秋/
発売年月日 2004/05/10
JAN 9784167651411

キャパ その死

¥220

商品レビュー

4.2

5件のお客様レビュー

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2023/03/12

▼「キャパ その死」リチャード・ウィーラン、初出どうやら1986(アメリカ)。沢木耕太郎訳、文春文庫。ロバート・キャパについての、今でも恐らくいちばん定番の評伝でしょう。文庫化にあたって全3冊になったその3冊目。読み終わるのが惜しくてしばし止まってしまったくらい楽しい読書でした。...

▼「キャパ その死」リチャード・ウィーラン、初出どうやら1986(アメリカ)。沢木耕太郎訳、文春文庫。ロバート・キャパについての、今でも恐らくいちばん定番の評伝でしょう。文庫化にあたって全3冊になったその3冊目。読み終わるのが惜しくてしばし止まってしまったくらい楽しい読書でした。 ▼ノルマンディー上陸作戦あたりから。戦場写真家としてもはや超一流の名をほしいままにしている(それでも若い。30くらい)キャパですが、この作戦で本当に銃弾雨あられの中に突っ込んでいく。  公式に軍に認められた従軍写真家は複数名いるわけですが、みんな自由意思で「いやいや、上陸の最前線はやめときますよ。死んじゃうもん」なんですね。ところがキャパだけは嬉々として行く。他の写真家とはちょっとメンタルの置き所が違う。ぶっ飛んでいる。気難しいわけじゃなくて、陽気に明るくぶっとんでいる。どこか自分で作っちゃった名声を自分で維持補強するために命かけているみたいな。 (スペインでの仕事は、「崩れ落ちる兵士」は「やらせ疑惑」が濃厚ですから、ほんまもんの危険な最前線は、キャパにとってノルマンディーだけだった可能性も) ▼ノルマンディーでの阿修羅の体験。「キャパ戦死した」誤報事件。ノルマンディー写真の「暗室ミス」での大量の損害。連合軍の「パリ解放」。キャパは自分が不遇時代も過ごした青春の街、約束の地、パリ解放をとにかく最前線で撮りたい。戦場のカオスの中でルール無視の現場主義で仲良くなった軍隊と突進していく痛快さ。 ▼そして戦後。セレブになってしまったものの、「戦場が無くなった戦場写真家」。ハンガリー国籍でニューヨーク、ハリウッド、ロンドン、パリで刹那的な仕事と交友を繰り返すどんちゃん騒ぎな日々。それを象徴するイングリッド・バーグマンとのロマンス。 ▼キャパは20世紀前半の人物らしく、映画、ハリウッドに夢を抱くのだけど、業界のよそ者素人であり、異邦人であり、ビジネスマンであるにはあまりにも自由奔放であり、憧れてもがくけれども結局は報道写真の世界しか戻る場所がない。その孤独と焦燥と、一方で報道写真家全体の地位向上を目指す純粋な使命感が熱い。写真集団マグナムの立ち上げと運営も、ドタバタコメディのような中で、一匹狼として生き抜いてきた「抜け目なさ」も発揮して後進たちの大きな道筋をつけて。 ▼でも一方で何かに焼かれるように「報道写真の現場」へ。当初は手を出さないはずだったインドシナ戦乱(ベトナム戦争)へのひょんな入り口きっかけが「日本での撮影旅行」だったことは日本人としてはなんだか奇妙な感慨。そして、ベトナムでの「地雷を踏んだらサヨウナラ」。キャパの死。 ▼「もう戦場カメラマンのしごとはこりごりだ」という気持ちと「やっぱりそこにしか自分がいちばん自分らしく輝ける、わくわくできるゲームが他に見つからない」という気持ち。この振れ幅のなかで陽気に踊りぬいた、「故郷を失ったユダヤ系ハンガリー人冒険家」。この本はその人生をなぞりながら、第1次世界大戦の起爆剤になったバルカン付近から、英米仏独露、という19世紀から20世紀を支配した諸帝国を跨ぎ、スペイン、イタリア、中国、日本、そしてベトナムと、それら大帝国の余波をうけて激しく揺れた地域を結果的に駆け抜けた姿を活写してくれます。正しく個人の評伝が時代を活写している。素晴らしい。 ▼諸帝国の思惑、マルクス主義とファシズムに揺れたブタペストから、ヒトラー揺籃期のドイツ、ベルエポックが爛熟するパリを経て、第二次世界大戦を予言するようなスペイン内乱、マドリード、バルセロナ。ファシズム対抗の最後の希望となるロンドンそしてニューヨークを根拠地として、民族主義と帝国主義と植民地主義と自由経済が悶え苦しむような中国、イタリア、そしてパリ解放からベルリンへ。冷戦初期のモスクワから黄金期のハリウッドへ。そして被爆国日本から、欧米帝国主義の行き止まりの地・ベトナムでの絶命。あまりにも出来すぎなその人生を、こういう観点で切り取った視野に、脱帽と絶賛です。 ▼まして、ここまで積み上げてきた読書でもはやキャパが「友達」のような感覚で読んでいますから、いやあ、楽しませていただきました。しばし呆然とする大満足。

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2013/03/04

 30歳から死に至るまでの10年間を追った『キャパ その死』は前の2作品が明とすれば、暗にあたる。   D−DAYの最前線を撮影したキャパは名実ともに「戦場カメラマン」として声望を高めた。だが、その取材方法は、どこか危険にわざわざ飛び込んでいるように感じられる。「戦場カメラマン」...

 30歳から死に至るまでの10年間を追った『キャパ その死』は前の2作品が明とすれば、暗にあたる。   D−DAYの最前線を撮影したキャパは名実ともに「戦場カメラマン」として声望を高めた。だが、その取材方法は、どこか危険にわざわざ飛び込んでいるように感じられる。「戦場カメラマン」という肩書に囚われているようだ。  しかし、戦争が終わり、自ら「失業中」と公言してからは、愛らしいキャパに戻る。女優のイングリッド・バーグマンとの恋愛エピソードなどは、とてもおしゃれでダンディだ。  空爆後のベルリンの廃墟を訪れた際に、壊れたバスタブに彼女を座らせてシャッターを切り、「俺はイングリッド・バーグマンの入浴シーンを初めて撮影したカメラマンだ」とおどける。  戦場にいないときのほうがキャパは生き生きとしている。  キャパの作品には無邪気なこどもの写真も多い。  戦争孤児の女の子が兵士と手をつないで、談笑しながら歩いている写真とか、戦車の上で鼻をほじって誇らしげにしている男の子とか。ピカソが息子と戯れる写真などは特に有名だ。キャパが楽しんで写したと思われる写真は、見ているこちらの心も和む。カメラを構えながら微笑んでいるキャパの姿が目に浮かぶ。日本に滞在したときの写真などはほとんど子どもばっかりだ。  それに比べてD−DAYの上陸時のピントのぶれた写真などは、臨場感はあるが、どこかテクニカルだ。    ゲルダの意思を継ぐという思いもあっただろうし、報道機関に都合よく利用され、命の値段が安いカメラマン仲間たちの境遇の改善に取り組まなければならないという使命感もあっただろう。    でも本心ではどちらの写真を撮りたかったのだろうか。    きっと子どもの写真だと思う。  キャパがもし長生きしていたら、どこかで「戦場カメラマン」という肩書を捨てていたように思う。  戦場カメラマン「失業中」というキャパの皮肉は、実はキャパの願望そのものだったのではないだろうかと感じる。    「失業中」のキャパをもっと見たかった。      

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2012/05/24

ゲルダと二人、売るために考え出した「ロバート・キャパ」というイメージに近づくため、またそれを超えるために生きた人生のように思えます。 帰る国がないということは、彼が結婚という形式に踏み切れなかったことに大きく影響を与えているのかも。 アイデンティティーをどこにおくか、またそのアイ...

ゲルダと二人、売るために考え出した「ロバート・キャパ」というイメージに近づくため、またそれを超えるために生きた人生のように思えます。 帰る国がないということは、彼が結婚という形式に踏み切れなかったことに大きく影響を与えているのかも。 アイデンティティーをどこにおくか、またそのアイデンティティーもたやすくなくしてしまうものであることが、意識下にあったように思えます。 「ティファニーで朝食」をのホリーと重なってしまった。 キャパとその彼を囲む人々、原作者、そして沢木耕太郎さん、いずれの仕事も魅力的ですばらしく、良い本を読めて幸せだと思います。 もう一度「ちょっとピンぼけ」を読んでみよう。 3冊あわせて写真集「PHOTOGRAPHS」の良い解説書にもなりました。

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