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死刑判決(上) 講談社文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 講談社/ |
発売年月日 | 2004/10/14 |
JAN | 9784062748667 |
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商品レビュー
3.5
4件のお客様レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
トゥロー久々の最新作は冤罪裁判をテーマに扱った重厚な作品。重厚といってもそれは本の厚みであり、内容は今までの作品とは違って暗いトーンがあるわけではない。 もしかしたらいつも出ている文藝春秋じゃなくて講談社からによるフォントや字組みの違いからくるのかもしれないが、今回はクイクイ読めた。今までの経験上、トゥローを読むときは1時間に40ページぐらいしか読めなかったように思うのだが、今回は60ページ強をコンスタントに読めた。 発端は死刑執行を間際に控えた殺人犯ロミーが無実を訴え、再審を要求する所から始まる。 その裁判の公選弁護士として選ばれたのはアーサー・レイヴン。30も半ばを過ぎているのにも関わらず、いまだ独身で本人も自身の人間的魅力に疑問を持ち、異性に対し、奥手な性格。しかし仕事に懸ける情熱は人一倍。彼は当時有罪の判決を下した元判事ジリアンと接触し、事件の詳細を調べる。 やがてある人物からの衝撃的な告白を聞き、ロミーの無罪を勝ち取るべく奔走する。 迎え討つは当事ロミーを有罪へ追いやった次期キンドル群検事候補と名高い“怖れ知らず”のミュリエルとミュリエルの不倫相手であり、ロミーから自白を勝ち取った刑事ラリーの二人だった。二転三転する衝撃の事実、果たしてロミーは有罪か無罪か、裁判の行方は? 原題は“Reversible Errors”。これは法律用語で「破棄事由となる誤り」という意味で控訴審で一審判決を大いに覆すような重大な誤りを指す。 この題名が非常に素晴らしい(翻って邦題の何というショボさ。いくらトゥローの既訳作品の題名が漢字四文字が多いとはいえ、これはひど過ぎ!凡百のリーガル・サスペンス作品と何ら変わらんではないか!!)。 文庫の帯にもあったがこれが単純に法律用語の意味を指すのではなく、アーサー、ジリアン、ミュリエル、ラリーら主人公四人の現在における過去の、元に戻すことが出来る過ちを指している。 この四人の中でもっとも印象的だったのがやはりジリアン。ロミーに有罪判決を下した判事であり、それを覆そうとするアーサーと恋仲になるという、この二律背反なセッティングが極めて興味深い。しかもヘロイン中毒という強烈な性格付けもしており、最後の最後までアーサーにはそれを隠している。 最後にその事実が途轍もない一撃となって裁判を揺さぶるわけだが、この辺りの設定の妙はトゥローならではだ。 (下巻の感想に続く)
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やっぱりリーガル・ミステリーといえばスコット・トゥローでしょ 他の作品同様、とにかく読み応えがあります。魅力的な人物造形とストーリー展開。車に例えるとフォルムとエンジンのバランスが絶妙で、ぐいぐいと引き込まれるように小説世界へと旅することができます。 彼の作品は概ね法曹三者(弁護...
やっぱりリーガル・ミステリーといえばスコット・トゥローでしょ 他の作品同様、とにかく読み応えがあります。魅力的な人物造形とストーリー展開。車に例えるとフォルムとエンジンのバランスが絶妙で、ぐいぐいと引き込まれるように小説世界へと旅することができます。 彼の作品は概ね法曹三者(弁護士、裁判官、検察官)が主要な登場人物となり、犯罪に巻き込まれたり加担したりと、だからといって、業界の暴露話に終始したり、法廷シーンが前面に押し出されるわけではなく、彼らないし彼女らの私生活へ深く入り込み、法律にかかわる人間の心理や葛藤を描写する手際よさに、僕なんかは感心するわけです。 リアルに感じるから?なぜ、訴訟社会のアメリカでない日本でこれまで生きてきて刑事事件なんかとは全く無縁で、その手の接点とはいえば多くの人と同様にテレビや映画、そして読書といったフィクションを通じてしかないのに? それはともかく、本書の原題は“Reversible Errors”。これは法律用語で「破棄事由となる誤り」という意味で、控訴審で一審判決を大いに覆すような重大な誤りを指します。 10年前レストランで3人の男女を撃ち殺しさらに死後強姦までしたとして死刑判決をうけたロミーが、執行の33日前になって無実を訴え出る。彼の公選弁護人に指名されたアーサーは始めはおざなりに仕事を進めるが、がんを宣告され余命間もない事件関係者による爆弾証言によって死刑囚に冤罪の可能性が高まる。 ロミーを逮捕し自白を引き出した刑事ラリー、公判担当の検察官ミュリエル、有罪の判決を下した元判事のジリアン。主要な登場人物の内、ラリーとミュリエルは10年前の事件当時不倫関係にあり、30歳半ばのアーサーは独身で女性に対しては不器用ながらも愛を求めて止まず、今回の控訴審に際して知り合ったジリアンと恋仲になる。 この二組のカップルを中心に物語は展開し、種々の駆け引きや嘘と本音の混在、裏切りと懐柔といったいくつもの事実が入り乱れて、それらは決して真実へ向けて収斂することなく、犯人は宙づりにされたままとなります。誤りは確かにあった。かろうじて正義ははたされる。果たしてそれがまっとうかどうかは意見の分かれるところでしょう。
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ここまで『推定無罪』『立証責任』と読んでトゥローの非凡なる筆致─単なるリーガル・サスペンスとしてでなく人間心理の内奥まで深く探るもの─に引き込まれていただけに大変残念。ただの薄っぺらなサスペンス、トゥローでなくても書けたような、むしろ書かないでいてほしかったが、通俗色の強いものだ...
ここまで『推定無罪』『立証責任』と読んでトゥローの非凡なる筆致─単なるリーガル・サスペンスとしてでなく人間心理の内奥まで深く探るもの─に引き込まれていただけに大変残念。ただの薄っぺらなサスペンス、トゥローでなくても書けたような、むしろ書かないでいてほしかったが、通俗色の強いものだ。もしかしたら下巻で変わってくるのかもしれないが、あまりのひどさに読む気も失せる。どうか『無罪』で落胆するようなことがなければいい。
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