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異域の人・幽鬼 井上靖歴史小説集 講談社文芸文庫
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商品詳細
内容紹介 | 内容:玉碗記. 異域の人. 信松尼記. 僧行賀の涙. 幽鬼. 平蜘蛛の釜. 明妃曲. 聖者 |
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販売会社/発売会社 | 講談社 |
発売年月日 | 2004/02/10 |
JAN | 9784061983601 |
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異域の人・幽鬼
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歴史小説の短編八作品を収録しています。 「幽鬼」は、本能寺の変をめぐる明智光秀の心の不安を象徴的にえがいた作品であり、「平蜘蛛の釜」は、松永久秀の織田信長に対する思いを主題的にあつかっています。 他方で、ある人物の生涯のなかのひとつの局面を切り取ったものではなく、時代のなかで...
歴史小説の短編八作品を収録しています。 「幽鬼」は、本能寺の変をめぐる明智光秀の心の不安を象徴的にえがいた作品であり、「平蜘蛛の釜」は、松永久秀の織田信長に対する思いを主題的にあつかっています。 他方で、ある人物の生涯のなかのひとつの局面を切り取ったものではなく、時代のなかでそれぞれのしかたで生きた一人の人物を俯瞰的な視点からながめた作品もあります。たとえば「異域の人」は、後漢の時代、西域で長く活動をつづけた班超の生涯をあつかったものです。また「信松尼記」は、武田信玄の五女である信松尼が戦国時代のなかで翻弄されつつ生きたすがたをたどり、「僧行賀の涙」は、遣唐使の一員として唐に派遣された行賀という僧の帰国するまでの活動とその心境をえがいています。 このほか、安閑天皇陵から出土した玉碗をもとに、主人公が亡くなった妹夫妻を回想する「玉碗記」や、著者とおぼしき人物が大学図書館に務める田津岡竜英という人物から匈奴をめぐる物語を聞かされる「明妃曲」なども、小説を読むことのたのしみをあじわえる佳品だと感じました。
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井上靖の短編小説。特に西域物である「異域の人」・「明妃曲」・「聖者」が個人的にお気に入りである。 西域都護として有名な班超にスポットを当てた「異域の人」は、班超自身が西域遠征に半生を費やすうちに西域の匈奴人のように「皮膚と眼の色」を変え、老胡人と化していた。 これは「僧行賀の涙...
井上靖の短編小説。特に西域物である「異域の人」・「明妃曲」・「聖者」が個人的にお気に入りである。 西域都護として有名な班超にスポットを当てた「異域の人」は、班超自身が西域遠征に半生を費やすうちに西域の匈奴人のように「皮膚と眼の色」を変え、老胡人と化していた。 これは「僧行賀の涙」で、帰国した僧行賀がまさに漢人のようになっていたのに似ている。国家の事業に自らの半生を賭した彼らだが、結果的にその功績は報われなかった。 しかし、こういった人生を歩んだ班超や行賀にはなんとなくシンパシーを感じてしまう。 王昭君にスポットを当てた「明妃曲」も、本来の悲しい王昭君の物語とは別のサイドストーリーが描かれる。匈奴として愛する単宇と生きる王昭君という話の方が、夢があって人間らしさ溢れる物語となろう。 「聖者」は。スキタイ人のある集落の伝説を扱ったものである。合理的な方法を用いて旧来の慣習を否定していった結果、その集落は水没し消滅してしまうというものである。人間の安直な近代化を戒めた伝説として教訓談としても面白い。 他に武田信玄の娘にスポットを当てた「信松尼記」や「幽鬼」、「平蜘蛛の釜」など時代小説も必読すべし。情景描写がリアリティがあり、読む物を中世の乱世へと誘ってくれる。 西域やシルクロード好きには珠玉の一冊である。
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「天平の甍」以外で初めて井上靖を読んだ。 文章のあちこちに、郷愁が溢れてるなあと思う。 そして美しい。 「僧行賀の涙」。 唐に留まっているとき、そして帰国したとき。 それぞれに違った望郷の念がある。 杜甫の春望は、どんな人にも少なからずある寂しさなのかもしれない。 井上靖の...
「天平の甍」以外で初めて井上靖を読んだ。 文章のあちこちに、郷愁が溢れてるなあと思う。 そして美しい。 「僧行賀の涙」。 唐に留まっているとき、そして帰国したとき。 それぞれに違った望郷の念がある。 杜甫の春望は、どんな人にも少なからずある寂しさなのかもしれない。 井上靖の小説に悪人はいない、と評した人がいるらしいが、 まさにその通りだと思う。 誰も人を害するために生きているのではない。 少しずつの行き違いが、悲しくなってしまう。
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