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イデアの洞窟
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イデアの洞窟

ホセ・カルロスソモサ(著者), 風間賢二(訳者)

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イデアの洞窟

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 文藝春秋/
発売年月日 2004/07/25
JAN 9784163231907

イデアの洞窟

¥660

商品レビュー

3.1

8件のお客様レビュー

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2021/03/02

『*1(脚注) 最初の五行は失われている。原典では問題の箇所は引き裂かれている、とモンター口は記している。わたしは、『イデアの洞窟』の翻訳をモンター口編のテキストの最初の文章から始めている。その版しか現存していないからである』―『第一章』 最初の脚注は、本文が始まる直前に掲げら...

『*1(脚注) 最初の五行は失われている。原典では問題の箇所は引き裂かれている、とモンター口は記している。わたしは、『イデアの洞窟』の翻訳をモンター口編のテキストの最初の文章から始めている。その版しか現存していないからである』―『第一章』 最初の脚注は、本文が始まる直前に掲げられた「第一章」という章番号に付けられたもの。それを読んで、ああエーコの「薔薇の名前」ね、と勝手に頭は読みの様式を準備する。しかし、本文から脚注を記す翻訳者への呼びかけとも読める文章に行き当たり、脚注が本文と交錯しミステリ風の物語の進行に関わって来るのを見て、エンデの「はてしない物語」のような話なのか、と考え直す。けれども「はてしない物語」では地と図が徐々に渾然一体となるような「物語」と「物語を読むもの」の交歓がある一方で、「イデアの洞窟」は物語を読むものが一方的に物語に取り込まれる構図。それに対して読むものである翻訳者は取り込まれることを激しく拒む。古代ギリシャを舞台にした殺人事件を巡る謎と翻訳が進行すると伴に翻訳者自身に突き付けられる謎。二重の謎は二匹のウロボロスの蛇のようにお互いの謎に浸入し最後に一点に収束する。 あとがきに、マーク・Z・ダニエレブスキーの「紙葉の家」への言及があるのを見て、納得すると同時に「あの」本に絡め取られていく恐怖感を思い出す。「紙葉の家」では、安全な関係である筈の本の読者という立場が崩れ、本文と脚注の関係が小説と読者の関係にも滲出し、読み方の次元を強制的に変更させられる。「イデアの洞窟」にもそれによく似た構図があるのだ。その慣性に敢えて従った邦訳者のあとがき。本書の構造主義的位置付けへの言及等も興味深い。ただし「紙葉の家」が一般的な読者への働き掛けが強く作用するのに対して本書は「翻訳者」にその作用は限定されると感じるし、「薔薇の名前」のような「開かれたテキスト」的記号も翻訳者が頻りに「直観隠喩法(Eidesis)」的にテキストを解釈する程には見当たらないので、もう少し気楽にミステリを楽しめる。 『読む行為とは、自分ひとりで考えることではないのだよ、我が友―それは対話なのだ! だが、質疑応答の対話はプラトン的な対話。あなたの対話者は概念だ。不変の概念ではないけれど。それと会話をするとき、あなたはそれを改変し、自分に合うように作り、それが独自に存在していると信じるようになる』―『第九章』 本書自体は先にも書いた通りエーコ風のミステリとして読んでも十分楽しめると思うけれど、ここで引用した文章は物語の筋と関係なくとても沁みる。世の中「科学的」であるとか「エビデンスベース」とか盛んに言われるけれど、科学論文だって皆案外読みたいことだけを読んでしまいがち。まあ、この文章を切り出すということもまた、そういうことを読みたい自分が居るというだけのことではあるけれど。 『「ああ……ああ……ああ……」へレナは笑った。あとで、かなりのちになってから、そのときヘレンが読んだことをわたしは読んで、なぜ彼女が笑っていたのか理解できた』―『第六章』 とはいえ、細かいことに何か意味があるのかと訝しむ気持ちは読書中常に励起された状態にあることを強いられるのも事実。例えば、ここで「ヘレナ」が何故「ヘレン(脚注)」と呼び変えられているのか。これは単なる誤植なのか。それとも翻訳者の隠された創作か。もちろん「直観隠喩法(Eidesis)」と同じように作家の仕掛けた謎の一つである可能性も否定できないけれども。所詮読者は洞窟に囚われて燕の影だけを見て想像する存在。 (脚注) その後調べたところ、スペイン語のオリジナル(La Caverna de Las Ideas)では単に「彼女(ella)」となっていることが判明。英訳(The Athenian Murders)でも「she」。ということは論理的には邦訳の際の誤植ということになる、のだろうか。あるいは邦訳に仕掛けられたリドルなのか。

Posted by ブクログ

2017/06/07

「薔薇の名前」のような読みにくさを予想していたけど、予想に反して読みやすかった。 古代ギリシャを舞台にした殺人事件で、ヘラクレス・ポントーという探偵がアカディメイアの教師から依頼されて、事件の真相を解明するストーリーとその翻訳者の注釈のストーリとの構成になっている。 このような小...

「薔薇の名前」のような読みにくさを予想していたけど、予想に反して読みやすかった。 古代ギリシャを舞台にした殺人事件で、ヘラクレス・ポントーという探偵がアカディメイアの教師から依頼されて、事件の真相を解明するストーリーとその翻訳者の注釈のストーリとの構成になっている。 このような小説ははじめて読んだ。でも内容的に物語にのめり込めなかった。翻訳者が偏執的に思えるし、「イデアの洞窟」自体のストーリーもカルト教団だからこういうことをするの?いまいち納得がいかない。 ただ、「イギリス推理作家協会賞受賞」ということで期待してたのですが。

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2012/05/02

野犬に食い殺されたとおぼしき若者の死体が発見される。だが不審を抱いた者がいた―“謎の解読者”と異名をとる男、ヘラクレス。調査に乗り出した彼の前に現われるさらなる死体。果たしてこの連続殺人の真相は・・・。 イギリス推理作家協会最優秀長編賞受賞に惹かれ手に取った作品。感想としては...

野犬に食い殺されたとおぼしき若者の死体が発見される。だが不審を抱いた者がいた―“謎の解読者”と異名をとる男、ヘラクレス。調査に乗り出した彼の前に現われるさらなる死体。果たしてこの連続殺人の真相は・・・。 イギリス推理作家協会最優秀長編賞受賞に惹かれ手に取った作品。感想としてはまあ難しい文章ですw。それにこの古代アテネとかの時代を舞台にした小説の独特な文章の重さはなんとも言いがたい感じが。 こういう感じの小説がイギリスでは人気ということなのでしょうか、イギリス人の推理小説への愛を感じますw。またイギリス作品ではホームズしか読まない私には、これらの類に慣れるには時間が必要です。 内容はミステリー。様々な古代らしい注訳や言葉がぼんぼん出てきますが、最後の結末への流れは惹かれるものがありました。これがミステリーでよかったです、そうでなかったら結局難しい印象だけで終わる所でした。 また翻訳者あとがきも密かに魅力。 この古代ギリシャを舞台にしたミステリ小説を翻訳するなんて、凄い苦労がありそうです。

Posted by ブクログ