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商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 晶文社 |
| 発売年月日 | 2004/11/10 |
| JAN | 9784794966209 |
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本作りには、どうも編集者という存在はかかせないものらしい。いわゆる書き下ろし、というまるまる一本の作品をはじめから最後まで収めた長編小説の場合であっても、作家によっては、執筆過程で何度も編集者の意見を仰いでいたりする。ましてや、この本のように方々に書き散らした解説や月報に載せた文...
本作りには、どうも編集者という存在はかかせないものらしい。いわゆる書き下ろし、というまるまる一本の作品をはじめから最後まで収めた長編小説の場合であっても、作家によっては、執筆過程で何度も編集者の意見を仰いでいたりする。ましてや、この本のように方々に書き散らした解説や月報に載せた文章、あるいは畑違いの方面に首をつっこんで書いた小品などを、それなりに体裁の整った単行本にするには、よき編集者の手を借りなければならないだろう。 自分でもあとがきで、「強面」と思われているらしい、と書いているが、『敗戦後論』は、文芸批評の枠を超えて論議を呼んだ。加藤がその際提起した問題は、それほど突飛なものでもなかったが、戦後を生きてきた作家や文化人の逆鱗に触れたようで、四方八方から批判されたようだ。意見の出し方がナイーブで、むしろ攻撃しやすさを感じさせる部分がこの人にはある。あまり深く突きつめて考えるのではなく、思いつきといっては悪いが、閃きのように感じたものを口に出してしまうような、軽さが感じられる。 そういう自分を加藤自身は「尻切れ」と自嘲しているが、実は日常的に私たちが話していることのほとんどが、最後まで徹底しない、首尾一貫しない論というものではないだろうか。本というものをいつも完成され、それだけで自立したものと考える必要はない。書き散らし、語りかけたまま放り出したようなものには、首尾一貫した論文のようなものにはない、冬の雑木林のような明るさがある。かえってそこに、今という時間を生きている人間が顔を出していたりもする。そういうものばかり読まされても困惑するのだが、たまにそういう物を読むのはそれはそれでまた愉しい。 いろいろなところに書いた短めの文章を丸投げされた編集者は、内容別に分類して五つに分けている。ヘミングウェイ、大岡昇平、そして漱石を扱った少し硬めの作家論。吉本ばななや阿部和重という若い作家や今の時代について書かれた批評。文芸時評。志賀直哉、中原中也、吉本隆明、鶴見俊輔といった私淑してきた作家や思想家についての文章。それに日々の生活にかかわる猫や人、住まいについてのエッセイ、である。 なかでは、「近代日本のリベラリズム―夏目漱石の個人主義」が読み応えがあった。漱石の講演が面白いのはかつて読んで知っていたが、加藤はそれを引用しながら、漱石を「それ以後のリベラルな主義とは違い、ヨーロッパの近代から移入されたという性格を持たない」リベラルな個人主義の出発地点と位置づけている。そして、それが可能となった原因をロンドン留学時の経験に求め「自分の風俗主観から切断され、まったく異質の世界に投げ出された、その『根無し草』性のただなかでつかまれたもの」だという。漱石の講演自体の面白さと、その裏にあった壮絶な格闘の対比が鮮やかな印象を持って迫ってくる。 日本の近現代文学にある程度関心がない人には向いていない。加藤典洋という文芸評論家のファンがどれくらいいるのか知らないが、そう多くもないだろう。そういう意味ではあまり幅広く読まれる本ではない。ただ、一人の評論家が自分を作りあげるのに誰からどんな影響を受けたかを、素直に語っている姿勢に好感を持った。フェルナンド・ペソアや長田弘の詩が好きというところには個人的に共感も感じた。生硬なところの残る文章は、あまり感心しない。もう少し肩の力を抜いて書けないものか、と注文をつけておこう。
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