あなたとともによい医療を 日本の医療と教育の勇気ある変革

日野原重明(著者), 福井次矢(著者)

• 販売会社／発売会社: インターメディカ/
• 発売年月日: 2004/07/20
• JAN: 9784899961017

商品レビュー

2010/09/12

臨床研修必修化が決まったころの若干古い本であるものの、医療の、特に教育の面における、日野原・福井両氏の先見性と将来へのビジョンがよく理解できる本である。

現在、医師偏在の問題の要因として臨床研修の必修化をやり玉にあげる向きがある。これは、大学病院の「偉い」先生方が言っていることなのであるが、私はこの考え方には賛同できない。

本書で述べられていることは、目先の話ではない。

将来の日本医療の構造をどうするか、どうやってその質を高めていくか、中長期的な視野に立って議論するのが筋であり、医師偏在の問題が喫緊の課題であるならば、現在の臨床研修を卒前研修にまで下ろしてくる法的解釈、あるいは法改正、そして病院の体制作りに目を向けていく必要があろう。そして、正式な免許をもった医師は卒後、地方に分散できる構造をつくることが大切なのである。こうした改革のスピードを、これまで20年、30年かけてやっていたところを4年なり5年で進めることこそ、解決策となるのである。

旧態依然とした医療構造にとらわれている教育機関の医師たちは、医学教育を根本から変えようとしている勢力の声にも耳を傾ける必要がある。