ぼくらはみんな閉じている 新潮エンターテインメント倶楽部

小川勝己(著者)

• 内容紹介: 内容:点滴. スマイル・フォー・ミー. 陽炎. ぼくらはみんな閉じている. 視線の快楽. 好き好き大好き. 胡鬼板心中. かっくん. 乳房男
• 販売会社／発売会社: 新潮社
• 発売年月日: 2003/05/20
• JAN: 9784106026560

商品レビュー

2022/07/27

『点滴』は父親の体たらくさに呆れるが、何もかも父親のせいにしてしまう主人公に腹立たしさを覚えた。主人公が父親を殺すことも父親のせいにしていて胸糞悪かった。『スマイルフォーミー』は、薬漬けのカップルが心中した話だった。女の左手で顔を隠す喫煙シーンは艶っぽかった。廃工場で主人公と組長が穴兄弟の女を売るか売らないかの会話は殺伐としていた。表題作『ぼくらはみんな閉じている』は一文”肛門。”から始まったので驚いた。デートで食べたわずか一枚のまずいお好み焼きが勘違いを生み、彼女の自殺にまで発展。そして、彼女のいきつけの喫茶店のマスターが彼氏に報復する流れに狂気性を感じた。『陽炎』は一時の少年と熟女の不倫を描いてた。結局は夫という元の鞘に戻っていた。まさに陽炎だった。『視線の快楽』は、要は妻を女優にした寝取られものにハマった夫の話だった。不倫相手の顔の皮や陰茎を削ぎ、自分自身に付け、不倫相手になりすましたのは恐ろしかった。『胡鬼板心中』は、自分が描いた絵に恋した兄を弟が殺し、兄の望んだ通りに羽子板にしたら、兄の悪評を作り上げた住人たちに燃やされてしまった話だった。「羽子板＝胡鬼板」を知れた。『かっくん』はトーテムポールのようなものに先っぽが魚の頭をした陰茎が生えた怪物に襲われるパニックものだった。腰を振ることを擬音化したような造語「かっくん」が奇妙で印象的だった。『好き好き大好き』は、好きな女性の母親が主人公を試していたオチ。トドのような見た目をした母親から主人公への愛撫という名のストーカーの描写が気持ち悪くて、湿気が付き纏うようなべっとりとした不快感を生んでいた。『乳房男』の最後の一文“こうして僕は——工藤紗栄子の乳房になった”には思わず笑ってしまい、ホラーとコメディが紙一重であることを再認識させられた。

2011/06/10

(収録作品)点滴／スマイル・フォー・ミー／陽炎／ぼくらはみんな閉じている／視線の快楽／好き好き大好き／胡鬼板心中／かっくん／乳房男

2009/12/29

壊れまくり。一気に読むと、精神的にちょっとつらいものがある。こういうの慣れない人にはおすすめできないかなあ（慣れてる自分が怖い）。
「好き好き大好き」のオチには爆笑。どういう着地をするかとどきどきしながら読んでいたら、こうきたか……。かなり毒のある笑い。他に「点滴」などもかなりの毒。ここまで書けるってのは、やっぱりすごいなあ。