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結核の歴史 日本社会との関わりその過去、現在、未来
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結核の歴史 日本社会との関わりその過去、現在、未来

青木正和(著者)

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結核の歴史 日本社会との関わりその過去、現在、未来

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 講談社/
発売年月日 2003/02/05
JAN 9784062116350

結核の歴史

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商品レビュー

4.5

2件のお客様レビュー

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2020/09/21
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※このレビューにはネタバレを含みます

結核とその日本社会における位置、関係性を1800年のスケールのもとで描き出した濃密な一冊である。今日における結核に関する基礎知識と、その予防、診断、治療、そして患者管理に関する実践のあり方を歴史のもとで相対化するために最適であると思う。 全体を通じた特徴として、疫学的な手法に基づいて各時代における感染状況が適切に示し、読者が規模感をはかることを容易にしているとともに、この本自体が疫学そのものの発展の歴史を知るための実例にもなっている。その点で、疫学の黄色い教科書「楽しい疫学」を楽しめなかった私自身にとって格好のテキストであった。あるいは本書を読むことではじめて疫学の手法への興味が湧くかもしれない。 本書の内容に関して、まず本書は結核菌(マイコバクテリウム・ツベルクローシス)とは何か、という細菌学の知見を押さえるところから始まる。結核菌は未分化の原始的な生物である抗酸菌群の一種ながら、他の単純な生物と比べてDNAの多様性が見られない。この特徴が示唆するのは、結核菌が古代から生物の進化にあわせて、宿主を変えながら、およそ5,000から10,000年前についにヒトに適応した新しい種であるということである。これまで発掘された古い人骨に見られる結核症状の痕跡がこれを傍証するという。 さらに、結核菌のヒトへの感染から発病、発菌に至る疫学特性と、肺結核だけでなく咽喉や腸など全身に及びうるその症状、そして治療法についての説明が加えられる。これらの客観的記述は2020年の読者である私たちには新型コロナウイルス感染症の特徴を連想・対比させる。 次いで、中世から戦後に至るまでの結核対策の歴史が語られる。ここではほぼ迷信に近い民間療法等について多くは語られず、サナトリウム療法以後の治療法の変遷に始まり、明治大正期からの法制度と医学発達の双方の進展に重点が置かれる。そうした中でも、結核という病気について語るにあたりしばしば付いて回る「結核のロマン化」の要因について考察を加えることを怠らない。具体的には、著者はデュボス夫妻の「白い疫病」を引き、医学的な理由というよりはむしろ、単に「若い男女が一、二年で死んでいく結核という病気が悲劇の道具立てに使われた」ことを指摘する。その一方で、結核という病気の特徴自体にもロマン化に繋がりうる要因が複数あったことを付け加えている。この箇所を読むと、実際に結核を経験した人であれば「そのとおり」と思える点も多いのではないだろうか。ところで、本書が医学的知識から文学までをバランスを保ちながらカバーし得たのは、著者が長らく結核治療の実務を務めてきたことに加えて、義母に「おとうと」の幸田文をもつためでもあろうか。 本書の問いは、なぜ今日でも結核は過去の病と言い切れず、今日でも根絶できないのか、という点である。その一応の答えは、結核という病は特に社会と深く結びついており、とりわけ現代では社会的要因がますます強化されているため、である。いま2019,20年の新型コロナウイルス感染症の流行の最中にあって、その発生から蔓延、社会経済への影響と政府・自治体・民間等による対策状況の経過を改めて見返してみると、まるで日本がもつ結核の1800年の歴史を半年間かけて早送り再生していたかのようだとも思う。あとがきにある通り、今日の結核患者と結核医療の従事者は「殿(しんがり)」には違いないはずだが、薬やワクチン開発だけではなく、感染症全般にとって社会側の要因である先進国の高齢化や移動のグローバル化、貧富の格差といった問題系を総合して解決することに現代の対策の力点を置くことが重要であることを本書が示唆しているように思われる。

Posted by ブクログ

2015/08/13

たいへん良くまとまっている。 実際に臨床に携わってきた経験も含めて良く記述されている。 最近100年のうちに、どれほど医学が発展し、試行錯誤しながら臨床応用してきたことか。現代に生まれた幸せを痛感した。

Posted by ブクログ

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