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映画の構造分析 ハリウッド映画で学べる現代思想
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 晶文社/ |
発売年月日 | 2003/06/15 |
JAN | 9784794965752 |
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映画の構造分析
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商品レビュー
3.6
14件のお客様レビュー
『哲学』というのはほんとうにヤなものだ。 死にものぐるいで見栄はって、いったい何冊の本を読んだ(ふりした)だろう。 内容は面白いほどに忘れ切っているのに…。 でもやっぱり「思考」という過程を分析的に見るのは(その時だけは)面白いと思うのだ。 で、この本はそのネタを映...
『哲学』というのはほんとうにヤなものだ。 死にものぐるいで見栄はって、いったい何冊の本を読んだ(ふりした)だろう。 内容は面白いほどに忘れ切っているのに…。 でもやっぱり「思考」という過程を分析的に見るのは(その時だけは)面白いと思うのだ。 で、この本はそのネタを映画に求めている訳だから面白くないはずがない、と思ったわけね。 『エイリアン』『大脱走』『ゴーストバスターズ』、それからマイケル・ダグラスの女殺しもの。 これらのロールプレイや設定の状況などがどんな根源的状況のメタファーとなっているか、それらをひもといていくのは確かに面白い。 ただなぁ…自分で見るだけだとここまで考えないだろうな~~~~、とも切実に思う。
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前書きでは、「できるだけ簡単に、だれにでも読みやすくを目指した」と書かれていたけど、それなりに難解な個所もあった。(内田さんのせいじゃなくて、ラカン自体が難解なだけかもしれない…) 全体としては面白かった。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
内田は、この本が、ラカンやバルトを使って、映画を批評するという凡庸な試みでないと最初に書いている。副題に「ハリウッド映画で学べる現代思想」とあるように、誰もが見たことのある有名な映画を使って、逆にバルトやラカンの術語を解説するのがこの本の眼目である。『寝ながら学べる構造主義』で、狂言や童話を材料にして現代思想をあざやかに解説して見せた手並みを今度はお得意の映画で見せようという趣向らしい。 私たちが何かについて考えるということは、その何かについての「お話」を作ることである。どんな「お話」つまり物語にも構造があるが、その構造の数は限られている。だから、無数にある物語は有限数の物語構造を反復しているに過ぎない。構造分析とは、バルトに言わせれば「私たちの精神の本質的な貧しさ」をあらわにする作業である、ということになる。しかし、限られた素材から美味しい料理が無数に生まれるように、意外に貧しい構造から、映画は豊かな多様性を生み出してきた。映画の持つ構造を解き明かすことで、どうしてそれが可能だったのかを探り、新たな愉悦を汲み出すのが、著者の目的である。 内田は、バルトの「作者の死」や「テクスト」という術語を採り上げながら、映画は監督の物でも俳優の物でもなくフィルム・メイカーたちが織りなすテクストであると規定する。すると、そこから、映されていながら、はっきりした意味を持たない映像の存在が浮かび上がってくる。その「鈍い意味」の中に開放性や生産性を見たバルトは、物語を中心化する力に対して「反―物語」化する力を「映画的なもの」と名づけた。内田の分析がこの視点からなされているのは言うまでもない。 意味が無理なくつながっているところには解釈の入り込む余地がない。つながり具合の不自然な「意味の亀裂」があってはじめて、物語は発動する。内田の解釈によると『エイリアン』は、白馬の王子様の救援を待たずに自立した女性が活躍するハリウッド開闢以来のフェミニズム映画ということになる。それが映画の中枢の物語であるとすると、当然「反―物語」の力は、ヒロインを性的コンテクストに再回収する方向にはたらく。その解釈を引き出すきっかけになるのは、唐突に映し出されるリプリーの鼻血に続くアッシュの額を流れる白い液体(精液を連想させる)の映像である。映画後半に頻出する性的アレゴリーに満ちた映像はそういう意味であったのかとあらためて気づかされるのだが、解釈を促すのはこうした「実定的な抵抗感」ばかりではない。 大事なことを意図的に言い落とす「欠性的な抵抗感」の例に採り上げているのは『大脱走』。内田は、これをアンチ・エディプス、父殺しをテーマとする映画だと読む。もちろんここで解説されるのは、フロイト=ラカン理論である。この映画は、フロイトの心的エネルギーと同じで、番人の監視の目を欺いて、代理的表象に変容して境界線を通り抜けようとする物語であると喝破する。脱出に成功した者と失敗した者を分ける理由をラカンの「父の否/父の名」を援用して解き明かすこの読みは秀逸。詳しくは是非本編を読んでほしい。 全編は三章に分かれ、表題と同じ題名を持つ第1章では、上記のほかに、アメリカ映画がはじめて、トラウマの本質に触れた歴史的映画として『ゴーストバスターズ』が、また、あらゆる学術的な物語論にとって「分析データの宝庫」であるというヒッチコックの映画から『北北西に進路をとれ』が選ばれ、分析されている。同じヒッチコックの『裏窓』と小津の『秋刀魚の味』を俎上にのせて「視点」について論じる第2章「四人目の会席者」と「第四の壁」や第3章「アメリカン・ミソジニー」など、どれも読み応えがある。中でも「男女比率不均衡」と「弔い」をキーワードにアメリカ男性のアメリカ女性に対する嫌悪の理由を分析した第3章は、アメリカン・フェミニズムについて、著者ならではの発想に溢れ、内田ファンを喜ばせるポレミックな論考といえよう。
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