公園の誕生 歴史文化ライブラリー157

小野良平(著者)

• 販売会社／発売会社: 吉川弘文館/
• 発売年月日: 2003/07/01
• JAN: 9784642055574

商品レビュー

2019/11/20

公園はそもそも、いつ頃から、何を目的として設置されたのかを知りたくてこの本を読んだ。
そういう意味で、本書は求めていた内容が余すところなく記載されていたので満足。

明治時代の政府の審議会において、その目的や設置計画が定められた。公園って意外と最近できたものだったんだ。

都市が近代化するに従って出てきた様々な問題、主に衛生的問題を解決する場として定められた。
「都市の肺臓」という言葉も出てくるが、空気を綺麗にする役割も考えられている。明治初期において既にそのような都市環境の問題を解決しようという考えがあったことに驚いた。

また、都市に労働者が集うにつれ、労働者の適切なレクレーション、余暇の過ごし方の場所としても想定されたとある。政府は働き手を健全に遊ばせる方法まで考えたりしていたんだな、と知った。

ただし、筆者が最終的に述べてるいるのは、当初想定された公園の目的や、その後時代に合わせて変わっていく有用な目的に対して、実際の公園の形態がほとんど変化していないとのこと。確かに、積極的な目的があるのに対してそれを正しく満たしている公園の姿がほとんど思い浮かばない。
なぜなら公園の機能論と、公園整備の計画論が乖離しているから、と筆者は結論している。

確かに、それもそうだと思ったけれど、なぜ乖離したかという点について僭越ながら私は、公園という緑地空間を積極的に生活で利用する文化が日本人の中に根付いていなかった事が問題ではないかと感じた。

日本人にとって公共の緑地は、寺社仏閣と共にその美しい景観を見て楽しむものでは無かっただろうか。役所が設置したただの緑陰をどう楽しんで良いのか分からないまま今に至っているのではないだろうか。日本人の生活の文化的側面が見落とされていたのではないだろうか、と考えた。

近代都市になってまだ100年ちょっと。公園が生まれてからも日が浅い。けれどもそろそろ、都市の人々が公園を自分たちのものとして利用していく文化が生まれても良いのかな。今後、市民の生活の中でもっと公園が利用されるには何が必要か、その事を考えるのに良い資料となった。

2010/08/01

本書における公園の切り口は「国家装置、制度としての公園」にある。

内容は、明治期の制度としての公園誕生と、近代都市化の枠組みにおける公園計画の概略。
防疫装置、欧化と美装、国民強壮化による生産性の増大、群集の監視など、当時期待された機能。
そして、国家的催事、儀礼の為の「空間メディア」としての側面の説明。

本書の内容は、著者の建築設計の技術者としての体験が関わっているという。
１つは、住民の希望とは無関係に行政側の請負により小公園を設計したこと。もう１つは、バブル期に、政治・資本の巨大な影響を感じつつも意志決定者の姿を見ることなく、記念的祝祭の開催を前提とした広場を設計したこと。

戦前に蓄積・体系化された公園をめぐる概念は、昭和31年の｢都市計画法」へ引き継がれ、今日へと連なり運用されている。
しかしこれらの出発点は、中央集権的な明治政府による都市の近代化理論と、国家運営に沿った公園の利用計画にある。
そろそろ公園の在り方を考え直しても良いのではないか？という問いかけが、本書の根底にあるように感じる。

個人的な読書目的は、震災復興公園へと連なる小公園の成立過程とデザインのヒント探し。
いくつかのヒントを得たが、これまで意識しなかった切り口を得られたのも収穫。

2006/08/24

公園とは？公園の歴史が紐解かれている．全く知らなかった公園の役割を知り，公園とはを常に考える現在に至る...