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摩滅の賦
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 筑摩書房/ |
発売年月日 | 2003/10/25 |
JAN | 9784480814548 |
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摩滅の賦
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3/12 読了。 「摩滅」をキーワードに、聖母子像、仏像、賓頭盧様、アンコール遺跡、ベケット、ボルヘス、デュシャン、飴玉、臼、砥石、東京、果ては時間そのものに思いを馳せる、ジャンル分け不可能なエッセイ。 市井の人びとに愛され、願いを託されて長いあいだ撫でさすられてきた彫像やレリー...
3/12 読了。 「摩滅」をキーワードに、聖母子像、仏像、賓頭盧様、アンコール遺跡、ベケット、ボルヘス、デュシャン、飴玉、臼、砥石、東京、果ては時間そのものに思いを馳せる、ジャンル分け不可能なエッセイ。 市井の人びとに愛され、願いを託されて長いあいだ撫でさすられてきた彫像やレリーフはその輪郭を失い、顔は愉悦の表情に溶けて、遂には何が掘られていたのかもわからなくなる。同じように彫刻の形を損なわせるのは、宗教戦争による銃撃。愛撫と暴力は時に同じ結果を齎す。 摩滅は緩慢な消失である。水の中にある石が美しく見えるのは、水の流れによって石が絶えず消滅へと近づいていくからである。鉱石や貝殻がいかに永久不滅を嘯いても、水や砂による摩滅からは逃れられない。 摩滅とは忘却である。視覚の敗北であり、触覚の復権である。
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この人の本職であるはずの映画に関わる本は実は読んだことがない。雑誌等で批評文のようなものは何度となく目にしているが、映像について語っている訳ではないので、実はあまり興味が持てない。しかし、それ以外の著作には深い興味があったりする。不思議なものだ。「月島物語」なんて、本当に面白い。...
この人の本職であるはずの映画に関わる本は実は読んだことがない。雑誌等で批評文のようなものは何度となく目にしているが、映像について語っている訳ではないので、実はあまり興味が持てない。しかし、それ以外の著作には深い興味があったりする。不思議なものだ。「月島物語」なんて、本当に面白い。何度も読み返してしまう。もちろんそこでも映画に関する文章には出会うのだけれど、映画が出てくる理由があるだけに納得がいく。きっと四方田さんはいつも映画自体について語る気はないんだろう。映画を材料にして社会について語りたいのだ、多分。 「摩滅の賦」も実に面白い本だ。摩滅するものについての本、である。まさしく。ビンズルさんも臼も彫刻も砥石もボロブドールも・・・摩滅するものの姿とその周辺を描いているだけなのだが、とても深い。人生というのも摩滅そのものだし、すべての存在するものは摩滅から逃れられない。文章ですらそうなのだ。 読みながら夢想する。すべてが消えてしまう未来の時。そんな途方に暮れるような想像をどの頁も喚起させる。人生という長さではどうしようもない摩滅というものの力を夢想させる。ただ夢想させる。そういう不思議な喜びを感じさせる本だ。
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