北富士入会の闘い 忍草母の会の42年

忍草母の会事務局(著者)

• 販売会社／発売会社: 御茶の水書房/
• 発売年月日: 2003/08/25
• JAN: 9784275002891

商品レビュー

2014/10/09

「忍草母の会」の会長、渡邉喜美江さんは、二〇〇三年、九七歳で亡くなった。彼女は、九十歳を過ぎても三里塚全国集会の壇上に上がっていたという。彼女たちを突き動かしていたのは、三里塚同様、生活の場を一方的に奪うものに対する怒りだった。
喜美江さんは、晩年のインタビューの中で以下のように語っている。
「いつ、なにをどうしたか、忘れちまうぐらい（演習場）に入ったよ。男より女が粘って、つかまってもなかなか白状しないし、演習所行ってなんぼでも粘ってるしね。「始末書書け」って言ったって、字も書けないし」（笑）
美 恵：　母の会ができたっていうのは、60年安保の時、先生（天野重知氏）が「安保に行け」って、そのときだね。安保なんていうことはわかんないわけだ、忍 草の農民には。安保って何だって言ったら、「アメリカと日本の親方が話し合えば、この演習場、あんたたちがいくら反対しても、一生使うだよ」って先生が 言ったわけだ。公民館へ集めて、「それじゃ行くべ」って、バスで六台ぐらい行ったずら。
その帰りのバスの中で樺美智子さんが死んだというニュースを聞いた。うちの方じゃあかちゃんをおぶってきた人もあるし、いろいろあったわけ。「女でも闘え るんだ」ってみんなバスの中でずっと話し合ってこれが契機になった。それで帰ってきて、二日くらいたってから、じゃこれ、母の会作った方がいいぞ。女でも 闘争ができるということで。それでうちの会長（渡辺喜美江さん）が会長になった。
国家権力を相手に入会（いりあい）地を奪還する長い闘争の歴史である。
陸軍→米軍演習場→自衛隊。相手は変わってもゲリラ戦は続いた。
自衛隊10周年パレードの粉砕・タコツボゲリラ・木登りゲリラ等々。
自衛隊にバスを止められた50名の母達が一斉にケツをまくってシッコする。
座り込みから引きずり降ろされてトラックに乗せられほかされても、舞い戻り結集する。
73歳と71歳の婆様二人が木に登って米軍演習を止めてしまう。
忍草母の会VOM・サテライト局まで作って。「騒音ゲリラ」までやってのける。
もう読んでて「わっ！」「わっ！」の連続であり、痛快な喧嘩っぷりなわけで
まさに「悪あがきの先達」なのです。同じ女として誇りに思います。