ブルックリンの調停者

レビン久子(著者)

• 販売会社／発売会社: 信山社出版/
• 発売年月日: 2002/02/10
• JAN: 9784797222197

商品レビュー

2008/02/18

著者は2001年から九州大学で紛争管理論を教えているが、1994年2月から、調停者としてニューヨーク州立ブルックリン調停センターでボランティアとして調停活動に携わっていた。本著は1994年12月までにかかれたもので、ブルックリンで著者自身が調停者として関わったケースや他の調停者の扱ったケース等を事例として用い、調停の魅力を伝えている。また、アメリカにおける調停の歴史や調停以外の裁判外紛争解決法（ADR）にも触れられていて、司法、裁判や調停に関する知識がまったくない読者にも読みやすくなっている。
調停は調停者の技術が大きく関わり、その技術（発言のタイミングや機転の利かせ方等）は経験によって身につけるしかない。本著で引用されたケースを担当した調停者はその技術を身につけた人であり、すべての調停が紹介されたようにうまくいくとは思えない。しかし、「ただ単に当事者を和解させることではなく、双方が満足できる和解策を見つけ出すこと」と定義される調停は、紛争解決手段を裁判が独占するかのような現状に、もっと姿をあらわしてもよく、また表わすべきだとも思わされる。