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漱石まちをゆく 建築家になろうとした作家
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 彰国社/ |
発売年月日 | 2002/09/20 |
JAN | 9784395006861 |
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漱石まちをゆく
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商品レビュー
2.5
2件のお客様レビュー
(01) 漱石作品の空間論である.が,文体と空間の関係,シークエンスの問題,遠近感や対象との距離などを論じていない点で,不備も多い立論ではある.大きくは西洋的なものと東洋的なものの対比を漱石の時間軸に持ち込んでの議論となっているが,やや図式的すぎるきらいがあり,近代における漱石作...
(01) 漱石作品の空間論である.が,文体と空間の関係,シークエンスの問題,遠近感や対象との距離などを論じていない点で,不備も多い立論ではある.大きくは西洋的なものと東洋的なものの対比を漱石の時間軸に持ち込んでの議論となっているが,やや図式的すぎるきらいがあり,近代における漱石作品の特異性に迫ることなく,その空間認識の近代性が社会のどの程度まで及んでいたかは本書(*02)からは知ることはできない. 最終章では西洋と東洋の文明の違いだけでなく,似ているところまで言及し,漱石のモダニズムの特徴を捉えようとしているが,説得性があるかどうかは分からない.また,「洋風」という様式がそのうちでも一様でないのと同様に,「南画」も決してひとくくりではないが,東洋の文や画への理解によりこの議論はもう少し違った方向へと導かれたかもしれない. (02) 建築家になろうとした,とあるが,建築家に「も」なろうとしたという漱石が研究されてもよいだろう.漱石作品の魅力は,この何にでもなれるが何にもなれないという離人感によっても語られるものと考えられる.
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そういえば、夏目漱石の千円札がお役御免になった。考えてみれば、金に翻弄され、権威に反発した漱石が、お札になったということ自体が皮肉な話ではあったが、それもおしまい。漱石も肩の荷が下りたのでは。 私が日本近現代史に興味を持ったそもそもの発端は、夏目漱石の伝記を小学時代に読んだ...
そういえば、夏目漱石の千円札がお役御免になった。考えてみれば、金に翻弄され、権威に反発した漱石が、お札になったということ自体が皮肉な話ではあったが、それもおしまい。漱石も肩の荷が下りたのでは。 私が日本近現代史に興味を持ったそもそもの発端は、夏目漱石の伝記を小学時代に読んだことである。そこから歴史にはまり、現在にいたっている(なぜ文学にはまらなかったのか?いまだに小説を読むのは苦手なのだが)。とにもかくにも、漱石というのは大変興味深い人物なのである。 著者は、漱石が建築家を志したというエピソードから、漱石の作品を建築という視点から読み解いていく。その結果、漱石が実によく町を見ているということが分かってくる。その観察眼が、作品にとって重要なモチーフになっていたりするというのだから、漱石というのは大したもんである(ちなみに文学者・漱石は、実は理数系の方が得意だったらしい。うらやましい話だ…)。 また、漱石作品に現れる「南画的世界」と「洋風建築」という二つの空間の対比に、東洋と西洋との文化的葛藤、そのなかで苦悶する漱石を見出すというのも、建築家の著者ならではという感じがした。東洋対西洋という図式自体は誰もが語ることだが、それを空間の問題から論ずるのは、文学研究者では難しいのかもしれない。 すぐれた作品は、いろいろな読み方が出来る。ということが分かる。 著者の若山氏は名古屋工業大学教授・工学博士。『風土から文学への空間』・『「家」と「やど」 建築からの文化論』・『建築へ向かう旅 積み上げる文化と組み立てる文化』など、建築と文化に関する論考が多い。本書は江頭淳夫(江藤淳)に私淑した著者が、恩師に捧げようとした一冊である。
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