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憂い顔の童子
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憂い顔の童子

大江健三郎(著者)

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憂い顔の童子

定価 ¥2,200

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 講談社
発売年月日 2002/09/25
JAN 9784062114653

憂い顔の童子

¥110

商品レビュー

4.5

3件のお客様レビュー

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2019/11/20

シマ浦さんの出産を助けるため、妻の千樫はドイツに旅立ってしまい 残された長江古義人は生まれ故郷への定住を思い立つ それは、母親が生前に語っていた「童子」をめぐる小説を書くための フィールドワークを兼ねてのものだった しかし、ノーベル賞作家で進歩派の大物と目される長江の定住は 地元...

シマ浦さんの出産を助けるため、妻の千樫はドイツに旅立ってしまい 残された長江古義人は生まれ故郷への定住を思い立つ それは、母親が生前に語っていた「童子」をめぐる小説を書くための フィールドワークを兼ねてのものだった しかし、ノーベル賞作家で進歩派の大物と目される長江の定住は 地元住民のさまざまな反応をひきおこした もちろん、すべてが好意的なものとは限らない 保守派のなかには長江古義人を快く思わない者が多かったし よそから来た権威の押し付けに対して、反感を持つ者たちもいたし 長江の書いた小説等で直接の迷惑を被ってる者も それに、長江古義人に対して複雑な感情を抱く熱心な読者もいた 長江古義人の作品研究で論文を書いているローズさんは そんな彼の状況を、セルバンテスのドン・キホーテになぞらえる そう考えてみると確かに 塙吾良を失ったのち、「アレ」の記憶にも苛まれてか 自暴自棄な行動に走りがちな長江の姿には その結果の深刻さにもかかわらず ドン・キホーテのような滑稽味がまとわりついていた ところで、ドン・キホーテには2人のライバルがいた ひとりは「鏡の騎士」サンソン・カラスコ もうひとりは、アベリャネーダの「贋作ドン・キホーテ」だ 「童子」をめぐる研究に進展のない中 熱心さのあまり、攻撃者の側に立ってしまった読者たち …言ってみればサンソン・カラスコたちを前にして 長江の精神的な足場はゆらいでいく 自分の信じてきたものは ドン・キホーテにとっての騎士道と同じく 妄想の産物にすぎなかったのではないか まあそれならそれで 少なくとも「アレ」の呪縛からは解放されそうなものだが しかし創作の原点であり なおかつ塙吾良との友情に結びついた思い出の「アレ」を 本当に捨ててしまえるわけはなかった そして、そんな時に読まされたアベリャネーダ…加藤典洋の スキャンダラスな「取り替え子」評がトドメになって 長江は、ほとんど自殺行為と言っていい自棄を起こしてしまう 意識不明で病院にかつぎ込まれた長江は 途方にくれる女たちをよそに 自分自身の「童子」と、それをもたらしてくれたものを思うのだった

Posted by ブクログ

2011/12/07

「取り替え子(チェンジリング)」の続編で、 大江の義兄である伊丹十三の自殺 (他殺説もあるが、大江は自殺説を とっているらしい)その心の闇と、 大江たちが少年時代に関わった、 アメリカ兵の殺害事件 (ただし、本当にあったかどうかは、 大江自身にも分からず、殺されたらしい、 という...

「取り替え子(チェンジリング)」の続編で、 大江の義兄である伊丹十三の自殺 (他殺説もあるが、大江は自殺説を とっているらしい)その心の闇と、 大江たちが少年時代に関わった、 アメリカ兵の殺害事件 (ただし、本当にあったかどうかは、 大江自身にも分からず、殺されたらしい、 という噂があるだけ)の 2点を、前作から引き続きモチーフにしている。 全体的に、どこまでが本当で、どこからが嘘か分からず、 自らをモチーフにした、身辺のことしか書かない姿勢といい、 いかにも「文学」という感じ(太宰のよう)。 さらに、他人からの「批評・批判」も、そのまま 作中に取り込んでいるので、なにかメタな感じになっている。 「チェンジリング」で、砲丸を足に落とされたのは、嘘だろう、 という批評に対して、「本当だ」と反論したりしている。 また、ギー兄さんなど、古くからのモチーフも、再び 使っているようだが、そこら辺の作品は未読なので、よくわからない。 これが、タイトルの「童子」である。 今回、下敷きになっているのは、表紙が、 ロシナンテを抱いて泣いているサンチョ・パンサ、 であることからも分かるように、 「ドン・キホーテ」で、作中、繰り返し言及されている。 この「ドン・キホーテ」の研究家が、新キャラのローズさんである (外国から来た、中年の女性で、ノースロップ・フライに師事した)。 似た系列の作品として、大江お気に入りの「ハックルベリー・フィン」も 少しだけ出てくる。「じゃあ、よろしい、僕は地獄へ行こう」という、 あのシーンが、抜き出されている。 出てくる人物は、簡単なもじりになっており、 石原慎太郎や、江藤淳はわかるのだが、 頻繁に出てくる黒野だけは、分からなかった。 深夜の討論番組で見かけるというから、田原総一郎かと 思ったが、あまりにも名前がかけ離れているし。 伊丹ファンなので、「静かな生活」(唯一の映画化作品)について、 原作には登場しない、山崎努(大江役)のトランクを使った、 自殺予行演習シーンについての言及 ※P345 (たしかに、言われてみれば、原作には出てこない) 「身代わりの人」という、劇中で不自然なテイストだったシーンに ついての言及というか、説明・解釈はおもしろかった ※P331 (ここも、映画評で、さんざん挿話の意味がわからない、と 酷評された、と断りを入れている。たしかに分からないのだ)。 評価といえば、本作中でも、大江のピークは 「万延元年のフットボール」まで、という評は、聞きあきた、 といったニュアンスのことが繰り返し書かれており、 そういう小人物感というか、いつまでたっても、 新人のようなことを言っている部分はおもしろい。 なお、前作では、伊丹に、もう「異化効果」はやめたら?と 言われたことについて、書いている。 「童子」に関連して、西郷さんの犬の子孫を、独力の努力により 存続させていた童子だが、戦時中の陸軍の毛皮供出命令により、 西郷さんの犬の子孫を根絶やしにされる、という挿話は、 (陸軍は、当然、西郷隆盛を尊敬しているはずなのに)皮肉である。 物語は、長江(大江)と、ローズさんが、 故郷である四国に帰り、長江の、長年温めている、 森の中の「童子」についての小説を構想するところから始まる。 この現地の手伝いとして、中学生の動(あよ)くん、 神社で働く真木彦さんなどが出てくる。 長江は、息子アカリ、ローズさんと3人で暮らしているが、 真木彦のイタズラに驚いて怪我をしたり、 小料理屋で、議員バッチを付けた男にぶち切れて、殴り合いをしたり、 中学生のイタズラで、体育館にアカリたちと閉じ込められたりと、 どこまで本当で、どこから嘘か、分からない感じの話は進んでいく。 やがて、動(あよ)くんが、ローズさんに惚れた気配があり、 それは不健全だろうと、長江の妹は心配するのだが、 結局、ローズさんは、真木彦と結婚することになり、出ていく。 その間に、「静かな生活」などでおなじみの、マーちゃんが、 訪ねてきたりもする。 一方、長江と古い付き合いのある黒野を中心に、 「新しい日本の会」改め「老いたる日本の会」が企画され、 長江も誘われる。 さらに、地元の人間に対する、文化的なセミナーとして、 長江は講師役に誘われ、話もまとまるが、 真木彦と別れて帰ってきたローズさんが、 性生活を暴露されたことに怒った長江が、セミナーの関係者と 決別する。 やがて、「老いたる日本の会」により、疑似デモというのが行われる。

Posted by ブクログ

2005/04/30

「取替え子」の続編.「ドン・キホーテ」やその他古典文学を読んでいないと十分に楽しめない作品かもしれない.ラストの余韻はすばらしい.

Posted by ブクログ

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