謎の女帝・持統 日本初の女性天皇 ベスト新書

関裕二(著者)

• 販売会社／発売会社: ベストセラーズ/
• 発売年月日: 2002/02/01
• JAN: 9784584120354

商品レビュー

2005/04/22

ううむ。ここまで云ふか、と思つた。

ことの眞僞は私などには分らないが、面白いと云へばたいさう面白い。

以下に、筆者の主張を幾つか擧げておく。

１．乙已の變は、中大兄皇子の蘇我體系王朝に對するクーデターであるが、失敗した。
２．蘇我系王朝は聖徳太子路線の延長にあり、豪族合議體制を基本としていたが中大兄は天皇獨裁を目論んでいた。
３．中大兄は蘇我系王朝の盟主を暗殺したが、政權は從來のまま蘇我系王朝のまま、孝徳天皇が路線を引き繼いだ。
４．大化の改新は蘇我系王朝の政治路線の延長である。
５．中大兄は蘇我倉山田石川麻呂を殺害し、孝徳天皇を孤立させた。
６．齊明重祚は蘇我系王朝と反蘇我系との妥協の産物である。
７．百濟王子の餘豐章＝中臣鎌足である。
８．百濟救援のために出兵したのは、反蘇我系王朝をまるめこんだ餘豐章＝中臣鎌足である。
９．大海人皇子は中大兄の異父兄で、高向王＝蘇我入鹿と齊明天皇の間の漢皇子である。
１０．壬申の亂は、蘇我系王朝（天武）が反蘇我系王朝（弘文）から政權を奪囘した戰である。
１１．天武の死後、持統は大津皇子を殺したが、それにより豪族達を敵に廻した。
１２．天武の死後、帝位についていたのは高市皇子である。だからこそ、その子供（長屋）は親王と呼ばれたのである。
１３．持統は結局反蘇我系王朝の天皇位についていただけで、此の時期、竝立していた。
１４．その事實を日本書紀などは巧妙に隱してゐるが、懷風藻などでそれと知ることができる。
１５．藤原不比等の畫策で、やうやく文武を帝位に就けることができた。
１６．すでに祖國（百濟）なきあと百濟王家（不比等）にとつては日本を乘つ取ることが生きる道だつた。
１７．その後、天皇に娘を嫁がせて反蘇我王朝と百濟王朝の合併王朝を樹立し、政治の實權を掌握することで、藤原家の陰謀は完成した。
１８．持統は自分の子供を帝位に就けたい一心から藤原不比等に利用されて、結局、ヤマト王朝を滅ぼしてしまつたのである。

２００３年５月１日讀了（鹿兒島にて）