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シェイクスピアを代筆せよ!
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 白水社/ |
発売年月日 | 2002/01/30 |
JAN | 9784560047422 |
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4
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題名からも分かる通り、前作『シェイクスピアを盗め!』の続編である。シェイクスピアの『ハムレット』の台本を盗むため宮内大臣一座に潜り込んだ孤児のウィッジが、しだいに芝居の面白さにのめり込み、ついに一座の徒弟になるという前作の魅力については以前の評を読んでいただくとして、問題は柳の下...
題名からも分かる通り、前作『シェイクスピアを盗め!』の続編である。シェイクスピアの『ハムレット』の台本を盗むため宮内大臣一座に潜り込んだ孤児のウィッジが、しだいに芝居の面白さにのめり込み、ついに一座の徒弟になるという前作の魅力については以前の評を読んでいただくとして、問題は柳の下に二匹目の泥鰌はいたのかということである。 結論から言えば、泥鰌はいた。それもなかなかの大物が。だいたい続編というのは本編ほどの面白さはないというのが定評のあるところ。登場人物は決まっているし、新しい趣向が前のものより面白くなければ読者はそっぽを向いてしまう。かといって、まったく趣の変わったものでは、続編を期待した向きに答えられないわけだから、作者としては話の持っていきように苦しむ。この辺の作者の胸中は作中で、『恋の骨折り損』の執筆に苦しむシェイクスピアさんの姿に投影している。 前作が、「依頼と代行」「宝探し」「権力の譲渡」「二重性」という主題群で構成された物語だとすれば、今回は「自分探し」が主たるテーマとなっている。その主題を際立たせるために、顔なじみの一座の面々に、ライヴァルとしてサレイシェル・ペイヴィという少年役者と、ウィッジの父親としてジェイミー・レッドショーという自称軍人が新しく登場する。「世界」は変わらないが「趣向」は変わる。1602年、一座はペストの猖獗を恐れるロンドンを離れ、旅回りに出ることになる。 ふつう人は「自分」というものについてあまり考えたりしない。ずっと前から自明のものとしてそこにあったように思い込んでいるからだ。果たしてそうか。事実は、今ある「自分」は、多くの事件や他者との出会いや別れを通して、その他者の一部やある時は大部を自分のなかに取り込み、今の「自分」を形作ってきたのではないだろうか。その他者とは、親や友人とばかりは限らない。時には嫌いな相手であったり劇中の人物であったりもするのだ。 ウィッジは孤児で自分の出生について何も知らず、一座を離れては行くところさえない。前作でやっと居心地のいい仲間集団に出会えた彼は、自分のアイデンティティーを一座に帰属してしまい、独り立ちできない自我の弱い少年として登場する。ところが、親友のサンダーをペストが蔓延するロンドンに残し、旅回りに出たウィッジは新入りのペイヴィーという少年に次々と自分の役を奪われて、さらには、木戸銭の持ち逃げを疑われた父をかばって仲間と対立してしまう羽目になる。 それらの事件を通じて、ウィッジは、成長を遂げる。「ぼくはこの数ヶ月の苦労のおかげで、自分がだれなのか、なにができるのか、少しはわかってきた」と言えるほどに。仲間を失いたくないために闘いを避けてきた彼だが、最後には敢然とライヴァルに挑戦して立つ。彼を決心させたものは、右手を骨折したシェイクスピアさんの口述筆記を手伝ううちに、いつか幾つかの大事なセリフを考え出すまでに育っていた自分と同じ境遇のヘレナの強い意志であったかもしれない。 ペイヴィとの対決の中でウィッジは自分に自信を取り戻し、役の中に自分を入れ込むことができるようになる。それは、役者ウィッジの誕生であるとともに、「親がだれだかわからないんで、自分がだれだか、半分もわからないんだ。自分がなにで‥‥なんでできているか知らんってかんじなんだ」と言っていたウィッジが一人の実在する人間として誕生する瞬間でもあった。 アイデンティティーの不安に悩むウィッジにアーミンさんが言う「自分がなんでできているかより、自分をどう作っていくかのほうが大切」という言葉からも分かるように、この物語は、これから自分を形作っていこうとする人たちに向けて書かれた一種の「人格形成小説(ビルドゥンクスロマン)」である。魔法を自在に操る主人公が人気の昨今だが、空飛ぶ箒がなくとも人は自分を思うように動かすことができる。それは自分が自分の主人になることだ。この本は、それを教えてくれる。
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※このレビューにはネタバレを含みます
図書館のリサイクル資料で手に入れた一冊。 シェイクスピアの劇団に徒弟として働く孤児のウィッジはその出自の曖昧さから役者としていまいち自信が持てずもやもやしている。 そんな折、強力なライバルが登場したりペストの流行で旅回りに出たりと身辺が落ち着かない。 そんな中座付き作家のシェイクスピアが骨折の憂き目に遭い、口述筆記を請け負うことになる。 さて、その物語とは・・・ ペストのことも目をそらさずキチンと描いていて誠実な作品だと感じた。 物語後半、「もうだれも好きにならない」とつぶやくテティにウィッジがかける言葉が秀逸だ。 人間は生きる以上、この言葉を求めずにはいられないだろうから。
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いぜんに読んだ第一作が面白かったので、そうだ、これがあったわと読んでみました。 児童文学なので、やや書き込みは少なめですが、読みやすく、感じが良いです。 17世紀はじめ、シェイクスピアのいる一座に加わった少年俳優の話。 「シェイクスピアを盗め!」というのが一作目。 父親を知らず...
いぜんに読んだ第一作が面白かったので、そうだ、これがあったわと読んでみました。 児童文学なので、やや書き込みは少なめですが、読みやすく、感じが良いです。 17世紀はじめ、シェイクスピアのいる一座に加わった少年俳優の話。 「シェイクスピアを盗め!」というのが一作目。 父親を知らずに育った孤児のウィッジ。 当時発明されたばかりの速記を仕込まれ、シェイクスピアの戯曲を盗み出すために劇場に送り込まれますが。 俳優になりたいと一座に入り、今ではシェイクスピアの口述筆記を引き受けるほどに。 ちょうど映画「恋に落ちたシェイクスピア」の時代で、視覚的には想像しやすいし~児童書なので書き込みは少なめですが、実在の人物が出てくるので歴史好きには楽しめました。 この点は2作目の本書も同様です。 シェイクスピアのいる宮内大臣一座に、少年俳優(おもに女形ですね)として加わったウィッジ。 それなりに役をこなしていますが、もう一つパッとしない。 そんな所へ他の劇団で光っていた気の強い美少年が移ってきて、ウィッジの持ち役を奪ってしまいます。 一方、ロンドンはペストに襲われ、劇場は閉鎖。 一座は地方へ巡業へ出ますが、これまた厳しい道のりなのでした。 (ポール・ドハティの歴史ミステリを思い出す猥雑さ…書き込みが多いのがお好きならこちらもオススメ) こちらのよく知らない史実を生かして~波乱の出来事がありありと描かれているので、どんどん読めてしまいます。 名字すらつけて貰えなかった寄る辺ないウィッジが、仲間や友達を得て、しだいに人として形をなしていくような成長ぶりにほろっとしましたよ。 ペストや飢えで死ぬかも知れないという危機感は、すごいと思うと同時に、今の日本からは遠くもあり、現代に生きていて良かったとほっとしたりします。 が~今も様々な危険があることはありますね~。 乗り越えていくのが人生の醍醐味でしょうか…!?
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