勝山心中

押川国秋(著者)

• 販売会社／発売会社: 講談社/
• 発売年月日: 2001/10/31
• JAN: 9784062106597

商品レビュー

2008/05/30

タイトルでなんとなく借りただけだったんだけどこれハマりました。これ映画にすべきだよ、YOU撮っちゃいなヨ。主演勝山に、こういう役こそ柴崎コウ、桐葉はそうねぇ。。。松本まりか。どう？ぜったいヒットするとおもうけどな。

ともかくも、吉原の勝山太夫というのはきっと実在した花魁さんなんでしょうね。勝山髷が流行したとか、花魁道中の“外八文字”の歩き方とか、あちこちの吉原舞台の小説にも出てくるし。でも私にとっての勝山は、隆慶一郎さんの「吉原御免状」に出てくる勝山。凄惨な拷問を受けながら、死に際に遺すひと言、、「主さんに、惚れんした、、、、」この台詞は心臓を的確に撃ち抜かれました。コアなファンの多いこの作品でも、私は勝山とおしゃぶが好きで。だから勝山のタイトルに惹かれて読んでみたんだけど。。。

ここに描かれる勝山像はまたぜんぜん違っていて。色里話だけれど　艶かしい床描写もなんか清潔感があって美しい。勝山の苦悩を先に知らされているから、桐葉との最後の一夜だって、すごく愛とつかの間の安らぎを感じたよ。ネタバレで言ってしまえば、ここに描かれる勝山は、性同一障害に苦しむ花魁。ココロは男なのに、女を売る苦界に生きなければならない苦しみ、そして、長兵衛との出会い。。。。そこにある想いは恋愛とは違うけれど、すごく熱くさせてくれる。吉原御免状では気のいい役だった水野十郎左衛門が、ここではタチ悪い悪役。この方もあちこち出てくるから実在なんだろうなぁ。。。　ともかく、勝山がこういう障害に悩んでいたという文献があるのかないのか知らないけれども、大いなる想像力で小説に仕立て上げたこの方は天才。ラストが悲しすぎるのが、、、ちょっとすっきりしない。。この世界観からすっきり出られなくなってしまう。そして誰もいなくなった。誰が救われたの？でもひょっとしたら、みんな死を迎えたことで救われた部分はあるのかもしれない。自分の性に違和感を感じたことのある人が読めば泣けるかも。押川国秋さん、初読だったんですが、もっと想像力の泉の水を飲ませていただきたい。次はネットで評判を目にした「人斬り忠臣蔵」(幻冬舎）　あたりを手にしたいでござりぃす、わっち。。。