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石神井書林 日録
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 晶文社/ |
発売年月日 | 2001/11/02 |
JAN | 9784794965080 |
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石神井書林 日録
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一気に読み終えた。内容といって、何が起きるわけでもない。石神井に店を構えてはいるが、目録を頼りに古書を売る古書店主の日録である。日々の古書探し以外にこれといって事件が起きようはずがない。では、面白くないかといえば、文句なく面白い。いったい何が面白いのか。探している本や、出会う本の...
一気に読み終えた。内容といって、何が起きるわけでもない。石神井に店を構えてはいるが、目録を頼りに古書を売る古書店主の日録である。日々の古書探し以外にこれといって事件が起きようはずがない。では、面白くないかといえば、文句なく面白い。いったい何が面白いのか。探している本や、出会う本の作者はほとんど門外漢には見知らぬ名ばかりである。しいて言えば、著者の熱狂振りである。近頃こんなに熱い語り手を見出したことがない。 古書店主には元何々というのが多い。しかし、元古書店主というのは見あたらない。どうやらここが行き止まりらしい。そういう私にしてからが、あまり熱心に職探しをした経験がなく、古本屋なんかもいいなあ、と漠然と夢想していたくらいだから、最後に古書店主という志願者は案外多いのかもしれない。ところが、どっこい、どうやらそんなに甘い職業ではないらしい。 登場する古書店主は、みなそれぞれの専門を持っている。建築書専門の港や書店とか、詩集専門の石神井書林のように。昨今、古書業界もご多分にもれず二極化しているらしい。ディスカウントの大型古書店と、得意な分野専門の古書店というふうに。著者は後者に属する。自分の好きな本をこつこつと探しては目録を作り買い手を待つ。要は、どんな品揃えをするかということである。 いろいろな仕事に就いた人が最後に行き着くのが古書店主だとするなら、一体そこにはほかの職種にないどんな魅力があるのだろう。誰しもそう考える。言ってみれば、それは美術館の学芸員のような、雑誌の編集者のような仕事である。自分の着想を頼りに数多ある才能を、一つのテーマの下に集めて披露する喜びである。それだけではない。掘り当てた作品は、他の業者との競争が待っている。競り落とすというスリルがつきまとうのだ。どんなに欲しいと思っても、付けた値が相手より低ければ自分の物にはならない。著者は、それを自分の欲しいと思う気持ちに値を付ける行為だという。 敵討ちと古書探しは出会い頭という言葉があるそうだ。滅多にない古書との出会いを逃すと一生悔やむ。たかが古本と思ってはいけない。新車一台くらいの値がかかっているのだ。A型の著者は、躊躇逡巡を繰り返す。ここら辺り、同じ血液型を持つ者として身につまされる。しかし、最後には、気合いを入れて入札、という一文が来る。力の入るところだ。 著者の周りには、同じ心意気を持つ古書店主が集まり、一つの共同体を構成している。それはいわば幸福なサロンである。「東京外骨語大学」という巫山戯たネーミングはもちろん宮武外骨から来ている。山口昌男を初めとして、月の輪書林の高橋徹、今やメジャーとなった坪内祐三などを構成員とするその集まりは、淡島寒月の周りに集まる趣味人のサークルを髣髴させる。 自分の好きなことをやって生きていくのは大変なことである。同業者の一人が雑誌の取材で、夢を聞かれて、古書店主を続けていられること、と答えたというのが身につまされる。本を身の回りに集めることをやめて久しい。著者達の情熱にはどことなくトレーディングカードに熱狂する子どもたちの口吻がまとわりつくような気もする。しかし、こういう人たちによって日の目を見る本もあるのだと思う。本に寄せるこの情熱が正直羨ましいとも思うのである。
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