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前方後円墳に学ぶ
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前方後円墳に学ぶ

近藤義郎(著者)

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前方後円墳に学ぶ

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 山川出版社/
発売年月日 2001/01/22
JAN 9784634604902

前方後円墳に学ぶ

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2012/03/01

前方後円墳に学ぶレビュー 前方後円墳の研究者、近藤義郎氏による各種講演会を元にした、前方後円墳とその出土品である埴輪についての、一般向け考古学啓蒙書。 講演会の録音の文字化であるので、内容は濃厚ながら文体は語り口調で平明で、素人にも大変読みやすい。 図版も詳細かつ多様で、前方後...

前方後円墳に学ぶレビュー 前方後円墳の研究者、近藤義郎氏による各種講演会を元にした、前方後円墳とその出土品である埴輪についての、一般向け考古学啓蒙書。 講演会の録音の文字化であるので、内容は濃厚ながら文体は語り口調で平明で、素人にも大変読みやすい。 図版も詳細かつ多様で、前方後円墳と埴輪の誕生と発展についての理解を深めるのにも役立つ。 『前方後円墳に学ぶ』という書題は、著者の研究姿勢をよく表しており、古墳とその出土品を唯一の物証として、そこからその時代の社会、宗教、心理を学ぼうというものである。 一貫して説かれているのは、考古学としての前方後円墳について、である。 著者近藤氏は実にあっさりと、 「私はろくに「魏志倭人伝」を読んだことがございません。したがいまして、「魏志倭人伝」や邪馬台国や卑弥呼のことは、私の話では、たとえ話に出てくるかもしれませんけれども、一切いたしません。あれは考古学の課題ではございませんし、私は研究したこともございません。(P129) こう述べているのである。 この言葉は、歴史学と考古学の違いを端的に示しているように思える。 私の大ざっぱな歴史認識では、弥生時代は古墳が造られ、そこには人物埴輪や動物埴輪が添えられていた時代、ということになっていた。 ところが、弥生時代と前方後円墳時代ははっきりと区別され、埴輪は特殊器台と特殊壺と呼ばれる祭祀用の焼き物に端を発するという。したがって、なじみ深い人物埴輪や動物埴輪などはこの書には殆ど出てこない。 興味深いのは、前方後円墳とその葬送儀礼の創設に際して、各地に独自に発展していた葬送祭祀儀礼を結合したと考えられていること、前方後円墳が誕生して以来速やかにほぼ日本全土(北海道、東北北部、沖縄を除く)に広まり、日本各地の小国同士の連携と連合の確認に使われたということである。 『古事記』などには、大和を中心とする天つ神系統を始祖とする一群が、出雲を中心とする国つ神系統を始祖とする一群を吸収していった過程が読みとれるのだが、これはそれを想起させるものではないだろうか。 近藤氏の推測が正しいとすれば、こうした合議による各部族の吸収と連合は、日本全土で行われていたことになる。 おそらく利害の一致だけでなく反発もあったであろう国々がひとつにまとまろうとするきっかけは、大陸からの圧力であったことは想像に難くない。 だが、それに対して武力による征伐と征服を図るのではなく、合議による連携の締結と、葬送儀礼の統一とそれの共有による連合の確認という穏やかな方法を採ったというのは驚きだ。 よく知られている人物埴輪は、前方後円墳時代の中期から登場する。 それは前方後円墳による統一体制が安定し、円熟期に当たる時期ではないかと思う。 そして、その埴輪について橋本治氏は『ひらがな日本美術史』1にてこう語る。 「どうして埴輪には、「嘆き」がないのだろう?  死者の埋葬と共にあるはずの埴輪には、「暗い嘆き」や「呪術的なつぶやき」がまったくない。ここにあるのは、いたって現世的で平明な幸福感だ。ここには、挫折も限界も不幸もない。」(P18-19) 日本全土の統一が図られた結果、隣国同士の小競り合いはあったかもしれないが、国と国の大きな戦争はなく、生産は増大したであろう。 祭祀のための特殊器台と特殊壺の生産だけでなく、古墳の周囲を取り囲む形象埴輪の製作に取り組む余裕も、そこから生まれたに違いない。 そして生まれた埴輪は、実に穏やかで柔らかい表情を見せている。 巨大な古墳を築く事への歓びや感謝がそこに籠められているのではないかと思わせるほどである。 時代が降るにつれて、前方後円墳は次第に築造されなくなっていく。 その理由は何か、今となっては知るよしもないが、連合していることが当然となり、巨大な古墳の築造によって確認される必要性を失ったこともあるかもしれぬ。 「日本」という枠組みの構築と拡大のために前方後円墳は創設され、その役割を失って築造されなくなっていったのではないだろうか。 さらにいうなら、これ以降、日本列島は「日本」というひとつの枠組みの中で「小国」に分割されることはあっても、――戦後の沖縄を除いて――「日本でない地域」拡大することはなかったのである。

Posted by ブクログ

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