夢の工房

真保裕一(著者)

• 販売会社／発売会社: 講談社/
• 発売年月日: 2001/11/25
• JAN: 9784062109468

商品レビュー

2010/02/08

以前クレタ島へ赴いたときのエッセーが面白かったので、読んでみた。
色々な雑誌等の短いエッセーの寄せ集めなので、通して読んでいると
内容がだぶっているところもあるのがやや気になる。
謙遜？されている文章では大丈夫ですから、わかってますから、と思いながら読み進めた。

今まで疑問だった取材方法について、アニメーターとしての名刺を使用して
取材をしたというのは納得だった。
それでも許可がおりない場合、忍び込んだりもしたというのがすごい。
確かスピルバーグも、詐欺まがいの方法で入り込みコネを作ったと記憶している。
自分の作品のための執念というか、真剣さを感じた。
また、アニメーターという前歴があるからこそ、小説だけでなくアニメや映画が素直に見られない
というのにも納得してしまった。
確かに同業者として、感嘆することもあれば疑問に思うこともあるだろう。
これだけ原作をいじって違うものにしてしまうことを嫌っている著者だが
ホワイトアウトについてはどうだったのだろう。
脚本も名前だけでなくかなりきっちり関わっていることがうかがえるエッセーではあったが
個人的には富樫の苦悩を描いた割りに、後半から物語が軽くなっているのが
真保さんは不本意だったのではないだろうかと思っていたのだが、エンターテイメントして
ありえないことでも面白さをとって実現させたのか、どうなのだろう…。
一読者としては、緻密さに惚れたのにそれが台無しだったのが不快だが
一ファンとしては、原作者がそれで良いと本当に思ってやったのならよかったと思う。

読切小説が一編書き下ろしで入っていた。エッセーだけでは、と書いてあったけれど
エッセーだけで十分読み応えがあるのに…。
真保さんにしては珍しく、ストレートで救われない話かと思ったら
やはりラストにどんでん返しがあった。
流石だと思う。

2003/02/12

エッセイ。作者は小説家になる前に、アニメの演出家等アニメの世界に身を置いてた。漫画の原作も行ったらしい。その仕事の仕方が小説を書くに至って参考になっているらしい。社会心理派とか事前取材のすごさを取り上げられる事が多いが、作者はこのようの意図を全面に出しているつもりはないと語っている。作者のプロフィール等を普段はあまり意識せずに、小説を読んでいるが、今回は作者のプロフィールを念頭に今後読み進めて行くと別の面から、作者の意図を汲取る事が出来るような気がした。