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巴里の恋 巴里の小遣ひ帳、一九三二年の日記、夫への手紙
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巴里の恋 巴里の小遣ひ帳、一九三二年の日記、夫への手紙

林芙美子(著者), 今川英子(編者)

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巴里の恋 巴里の小遣ひ帳、一九三二年の日記、夫への手紙

定価 ¥2,090

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商品詳細

内容紹介 内容:巴里の小遣ひ帳. 一九三二年の日記. 夫への手紙
販売会社/発売会社 中央公論新社/
発売年月日 2001/08/07
JAN 9784120031731

巴里の恋

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商品レビュー

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2012/12/15

この本におそらく材を得た芙美子の特集を、以前NHKで観た記憶があって放浪記を読んだあとでこちらを手に取りました。ここでは芙美子の巴里滞在の日記と小遣い帳・夫である画家の手塚緑敏への書簡が詳細に紹介され、芙美子の秘めた恋をも示唆する資料になっています。 芙美子は確かに当時、手塚緑...

この本におそらく材を得た芙美子の特集を、以前NHKで観た記憶があって放浪記を読んだあとでこちらを手に取りました。ここでは芙美子の巴里滞在の日記と小遣い帳・夫である画家の手塚緑敏への書簡が詳細に紹介され、芙美子の秘めた恋をも示唆する資料になっています。 芙美子は確かに当時、手塚緑敏と夫婦の間柄ですし、恋をして許される状況ではなかったでしょう。でも、私は彼女を、多情多恨の人だとは思えませんでした。放浪記で語られる彼女は、生きることに必死で、誰か助けてくれたらいいのにとは言いますが、それをなし得るのは、自分しかいないことを痛感しています。 結婚後も、両親や夫の生活は、芙美子の筆にかかってきます。日本を離れたとしても、それは変わらず、孤軍奮闘するしかないわけで。夫に対する書簡の、なんと愛情細やかなことでしょう。「あなたの絵の勉強には、パリはいい。必ずここに来る方策をたててあげたい。本気で学ぶ決心をして。」そういい送り、二科展の入選を祈る。「生活が立ち行くようになって、おしろいくらい甘えて買ってといいたいわ」と、嫌味ではなく緑敏を夫として立て、可愛く言ってみせる芙美子。 彼女は運命の恋人白井晟一とパリで出会って恋に落ちますがだからといって、彼に走ることは自分に許していません。将来を嘱望される白井の将来を思い、両親や夫への自分の責任とそれまでの生活の積み重ねの重さを思って、別離を白井との別離を愛しながらも既に決めていたのです。 画家という夫の仕事を考慮すれば、すぐ芽が出るというものでもなくじっくりとその大成を待つことも大事で、それには自分の支えが必要だということは、芙美子には解っていたことでしょう。夫は芙美子の才能を理解し、愛してくれていたでしょうが、彼女の背負ってきた重荷を軽くしてくれるには困難だったのかもしれません。 生まれて初めて、その心の重荷を降ろしていいと言ってくれた男性の境遇と、既に人の妻である自分を見つめれば、別離は初めからわかりきっていたことです。ついて行きたかったでしょうに。けれど彼女にとって幸いだったことは、夫も白井晟一も彼女に真剣であったことです。彼女の代表作「浮雲」「めし」は、晟一の影響がありますし、それは彼自身が生前認めるところでした。かりそめの思い込みでなかったということがどれほど慰謝になるか。万感の思いがあったに違いありません。 芙美子は多情の女性のように思われがちですが、私自身はちょっと違う印象を受けました。かつて樋口一葉が自宅に文学サロンを形成し、多くの男性作家が彼女を慕って、擬似恋愛を疑われたように芙美子もその才能や個性に惹かれた男性が周りには多くいました。自ずと華やかな雰囲気や、軽い駆け引きはあったでしょうが自分に降りかかる、甘えや駆け引きは、上手くかわしていただけで、実際はそんなにふらふらしているとは、夫宛の書簡を読む限り、思えないのです。むしろパリへの出奔は、結婚しても自分の腕にかかるものの多さ重さに彼女が疲れて、誰も重荷を負わせないところに一時的に逃避した感があるのです。 現実的な芙美子のことですから、それでも家族の生活のことには驚くほど愛情深く、細々と配慮をするのですけれども。ですから、運命の悪戯に「なぜ今になって出会ったか。」とも「でも、異国で、しかも今の自分にだからこそ成し得た恋だ。」とも「しかし、これは真剣だからこそ、終りのくる恋だ。」とも何度も嘆息したのでしょうね。 夫を振り切って身勝手ができるような浮ついた女性ではなかったでしょうし、恋の相手も終生芙美子を想ったことを考え合わせれば、出会って、そして別れなくてはならない、それが必要だった巡り合わせだとしか思えません。 骨太な作品を多く残した芙美子の、繊細な一面と地に足のついた生活者としての一面を知る、格好の資料でした。大変な労作だと思います。

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2012/02/26

著者の今川さんとお会いすることになって急ぎ読んだ。 まずは20日以上もかけて単身下関からシベリア鉄道経由で渡仏した林芙美子に敬意を!! 思いがけない『放浪記』の印税を手にして飛び立ったらしいが、 実は恋する人を追っていったという説もある。 何度も手を入れられた日記や随筆から真実...

著者の今川さんとお会いすることになって急ぎ読んだ。 まずは20日以上もかけて単身下関からシベリア鉄道経由で渡仏した林芙美子に敬意を!! 思いがけない『放浪記』の印税を手にして飛び立ったらしいが、 実は恋する人を追っていったという説もある。 何度も手を入れられた日記や随筆から真実の巴里暮らしを検証しようとした本と言えるだろう。 驚いたのは夫への手紙が初めて公開されてること。 さらに驚いたのが執事にでも指令しているような文章だ。 新しい夫婦関係だと著者は評しているがなんだかなあ… 語間、行間をもっとしっかり読まなくてはと思っている。

Posted by ブクログ

2010/02/28

国に待つ夫、手塚緑敏。 異国に遊ぶ妻、林芙美子は、 手紙に思慕をしたため、 同じペンで、日記を綴る。 「Sまつてゐる。会へば胸あふれる思ひ。(中略)何も かも考える事、仕事の事親の事夫の事、こゝだけは 別な少女の私でありたい。どんなムチでも受けませう」 帰国後もS(白井晟一)...

国に待つ夫、手塚緑敏。 異国に遊ぶ妻、林芙美子は、 手紙に思慕をしたため、 同じペンで、日記を綴る。 「Sまつてゐる。会へば胸あふれる思ひ。(中略)何も かも考える事、仕事の事親の事夫の事、こゝだけは 別な少女の私でありたい。どんなムチでも受けませう」 帰国後もS(白井晟一)の記述は続く。 「心なく隠しておいた晟一の書信を緑見てゐる、さて もうたてや。ゆるしてほしい。だが、晟一は心の墓表 〔標〕だ。だが、それだけ、私はとにかく命ながらへむ」 でも、すぐには過去にならない。 「あの山だつて、此白樺の木だつて、皆コドクだ、愛 情をセイリせぬ女奴、あゝだが、青草の上にむせ て、私は涙の流れるまゝの状体〔態〕だ。こゝから は、すべての国が遠い。晟一よ長い事会ひません!」 かわいそうな緑敏。 「庭は草花の真盛り、私の留守の間に、緑さんは、 何を考へて、こんなに花を植へたのであらう。虚心 なるものあはれなり。虚心ならざるものあはれなり」 やわらかく、脆くも大きい、緑敏の器。 芙美子が「花そろへておいて」と求めたから。 日記は帰国前の数週間から、 二か月分が失われている。 誰の仕業か。何の意図か。   熱は次第に微熱に変わり、 いずれは遠い星になる。 ときどきに自分の心に正直な人。 恋がなければ生きられない女性。 恋がなければ綴られない作家。

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