ベートーヴェンの「正しい」聴き方 青春文庫

吉成順

• 販売会社／発売会社: 青春出版社/
• 発売年月日: 2000/04/20
• JAN: 9784413091374

商品レビュー

2023/04/28

このタイトルからは内容がわかりづらいが、中身はまともなベートーヴェンの評伝であった。2000年に出版され、すでに絶版になっている本なので、期待しないで読んだのだが、予想外に良い出来栄えで感心した。

ベートーヴェンの評伝は、平野昭／著の「ベートーヴェン(カラー版作曲家の生涯)」や「ベートーヴェン(作曲家・人と作品)」、青木やよひ／著の「ベートーヴェンの生涯」、近年では、2020年に発行された中野雄／著の「ベートーヴェン 音楽の革命はいかに成し遂げられたか」など、これまで何冊も読んでいるが、それらの書籍と比べても、抜群に読みやすい。

本書の特徴はその読みやすさにあると言えるだろう。本書の監修者は知名度のある吉成順氏が行っているが、執筆者は上原章江という人である。この人は文章が巧い。

内容は平野昭氏の著作の方が詳しいが、本書では、事実をまんべんなく盛り込むのではなく、詳細は削って、要点を上手く押さえ、過不足のない内容にまとめている。題材の取捨選択や、文章作成能力が優れており、その手腕は高く評価できる。また、「不滅の恋人」の正体のように、不確実性がある部分については、断定していないところにも好感が持てる。

読みやすくて、それなりに詳しいベートーヴェンの評伝として、ビギナーにも、中級者にもお勧めできる。門外漢にもわかりやすい様に、音楽用語には説明が付されており(例：オラトリオとは～)、ベートーヴェンを知るための最初の1冊にふさわしい出来栄えとなっている。

クラシック音楽関連の本はたくさん持っているため、再読に値する本以外は処分することにしているが、本書は処分せずに、当面所有しておくことにした。