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企業保障と社会保障
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企業保障と社会保障

武川正吾(編者), 佐藤博樹(編者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 東京大学出版会/
発売年月日 2000/02/25
JAN 9784130511124

企業保障と社会保障

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2023/04/22

『企業保障と社会保障』  20年以上前の本ではあるが、専門的な観点で私の仕事の領域について書かれた名著であり、非常に勉強になる。私は、保険会社出身で、現在は保険代理店と言う形で福利厚生保険というニッチな分野を生業としているが、本書を読むと大局的な見地から、自身の仕事について把握...

『企業保障と社会保障』  20年以上前の本ではあるが、専門的な観点で私の仕事の領域について書かれた名著であり、非常に勉強になる。私は、保険会社出身で、現在は保険代理店と言う形で福利厚生保険というニッチな分野を生業としているが、本書を読むと大局的な見地から、自身の仕事について把握できる。保険をバックボーンにしている故、さらには、法定外福利をビジネス領域としている故に、法定福利+法定外福利という軸が少々自分自身の思考の枠組みから外れていたように思える。法定福利費は、人口減少や人口動態の変化に伴い、じわじわと保険料率が上がり続けている。一定年齢以上の労働者は所得のうち、最大30%(健保+年金+介護)を社会保険料として支払っている。その事実すらも正直なところどの程度の人が認識しているのか不明であるが、さらに社会保険料は概ね折半となるので、会社もその分の社会保険料を支払っている。 もちろん、企業が社会的な存在である限り、社会保険料が義務ではある。しかしながら、本書の第3章「法定福利費負担と企業行動」では、この社会保険料負担について、公的な費用と言う観点で法人税と比較し、法人税が当期利益部分にしか課税されない、つまり企業が赤字であれば払う必要がないにもかかわらず、法定福利費は赤字であろうが黒字であろうが固定的な費用として負担を強いられる。社会的な費用と言う観点はありつつも、このような仕組みは従業員1人を雇う/雇い続けるコストは引き上げ、結果的に雇用機会の流出といった事態を招きかねないことは事実であろう。さらに、法定福利費と法定外福利費は概ね反比例する(福利費というものが一定額で決まっているのであれば、法定福利費と法定外福利費はゼロサム的な関係性となる)ため、企業独自の福利厚生制度の構築は否応なしに阻害されてゆく。昨今では人的資本経営と言う名の下に、人(=総人件費)への投資は追い風にはあるが、一定の予算の中では法定福利費の負担は企業の自由な行動をやはり抑制することは考えられる。さらに、高年齢者雇用安定法により、今後高齢の労働者が増加すれば、労災事故が多発し、企業負担となる政府労災の保険料も上昇する可能性は高い。こうした中で、企業が人を雇うと言うことに関する報酬以外の付随的なコストは非常に高い。社会保障は国からお金が出ているという感覚を多くの人が持っているが、原資は我々の給与から差っ引かれた保険料である。節税や社会保険料を抑制する行動を私は必ずしも良しとはしないが、せめて従業員は企業が社会保険料の折半分を支払うことで、その恩恵にあずかっているということは自覚的であるべきではないかと思う。 外資系企業では、極めて厳格にコストコントロールがなされている。そうした観点から、日本で雇用を創出する際の、付加的なコスト=法定福利費が大きければ、彼らが日本で事業を行う上ではハードルになることも考えられる。 実際のところ、私が相対する外資系企業では、健保の保険料率の高さを理由にコスト抑制策として自社健保設立を検討しているケースをよく聞く。外資系であれば法定福利費へのアプローチを考えるのはある意味当たり前であろう。自社健保設立のメリットは、協会けんぽや産業別の健保に比べ、保険料率が安く、なおかつ自社独自の制度を整備しやすいところにある。特に、若手が多く医療費がかかるリスクが低く、また、標準報酬月額が高い企業であれば、そのメリットを享受しやすい。世代間負担の偏りを考えると非常に合理的であろう。しかし、このような企業行動は大局的に見ると、健康リスクの細分化を招く。つまり、リスクの低い若い従業員の多い企業体が、自社健保として独立することで、旧来の健保にはリスクの高い高齢層の企業体が必然的に多くなる。高齢層の多い企業が太宗を占める健保では、おのずと給付が増加し、保険料率が高くなる。アメリカで生じた「保険危機」というものへの兆候が健保分野でも見て取れる。一方、自社健保にはデメリットとしてリスク集団が少ないため、キャタストロフィ・ロスと呼ばれるような発生確率は低いが甚大な支出が必要な事故に対しては弱い。健康保険法上では、健保のリスクを保険会社等に移転することは禁じられている(と解釈している)が、再保険のような形で健保からグローバルな保険市場に自社健保からリスク移転することができれば、自社健保はキャプティブのような形で一定のデメリットを克服できる可能性もある。 結局自分の考えが多くなってしまったが、インスピレーションを与えてもらったという点で非常に良い本であった。

Posted by ブクログ

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