連想実験

カール・グスタフ・ユング(著者), 林道義(訳者)

• 販売会社／発売会社: みすず書房
• 発売年月日: 2000/12/15
• JAN: 9784622049906

商品レビュー

2021/12/18

■連想実験はいくつかの知性タイプを立てることができると長い間信じられてきたがこれは完全に間違っている。実験は純粋に知性的な現象についてではなく、むしろ情緒的な現象について特別な認識を与えてくれる。
　我々は確かにいくつかの反応タイプを立てることができるがそれは知性に基づいた特徴ではなく、全く感情的な態度に基づくもの。教育のある被験者は主として表面的で言語的な特徴を強く持った連想を示すが教育のない被験者はより多くの価値のある、しばしば意味深い連想をする。
　教育によって区別されるいくつかのタイプを別とすると主に4つの個別タイプを区別することができる。
①確実で妨げられない反応をする客観タイプ
⓶実験の際にコンプレックスの布置によって引き起こされる乱れを多く示すいわゆるコンプレックスタイプ
③いわゆる定義タイプ。このタイプは反応が常に刺激語の内容の説明或いは定義を与える。このタイプは特に愚かな人に見られ、それゆえ痴愚においてごく一般的にみられる。しかし、実際には愚かではなくただ愚かだと思われたくないと思っているだけの人においてもこのタイプはみられる。実際よりも頭が良いと見られたいものだけ、即ち愚かであることを嫌だと思っているものだけに起こりうる。私はこのよく見られるコンプレックスを「知能コンプレックス」と呼ぶ。
④述語タイプ。より正確に言うと価値述語タイプ。
■友情や愛情を得ようとする最初の試みは両親との関係によって最も強く布置され、それは通常、家族的布置の影響がいかに強いものかを示すことになる。
　例えば母親がヒステリーである健康な男性がまたもやヒステリー患者と結婚したり、、酒飲みを父親に持つ娘が同じように酒飲みを夫に選ぶということは珍しいことではない。
■かつて連想実験は様々な知的タイプを設定するために用いられてきたが、その際には顧みられなかった重要な現象として実験の乱れがある。
　私が一連の刺激語を示し被験者に反応させる、即ち一つ一つの刺激語に答えさせるとその反応は同じように滑らかには起こらず、しばしば反応時間の遅れやその他の乱れ──刺激語の繰り返し・言い間違い・一つ以上の反応後の答え──を伴って不規則に起こる。この乱れは以前は単に実験の誤りとみなされ、そのため注意をひくことがなかった。しかし私はフランツ・リクリンとともにまさにこの乱れの現象に目を向けた。私たちはどこで、つまりどのような刺激語に対して乱れが起こるのかを調べそれが主として個人的な事柄に関連する場合であることを発見した。
　この事柄は必ずなにがしか辛い性質を持っている。この関連の多くは一目見ただけでは分からない「象徴的な」性質のものであり、「暗示」の形で現れる。ただし、一般に実験の乱れとつながりを持つものは個人的事柄のごく一部に過ぎない。
　このような「個人的事柄」は常に様々な観念が共通の感情の調子によって結びついて一個の複合体になったものであり、それにちなんでリクリンと私はこの「個人的事柄」をコンプレックスと名付けた。