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白山の水 鏡花をめぐる
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白山の水 鏡花をめぐる

川村二郎(著者)

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白山の水 鏡花をめぐる

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 講談社/
発売年月日 2000/12/18
JAN 9784062104432

白山の水

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2013/03/11

二十一の章それぞれに、「川」や「橋」という標題がつけられている。たとえば、「橋」では、保田與重郎の『日本の橋』を引き合いにしながら、自然と人工、西洋と日本という二項対立の形式を用いて、彼岸と此岸をつなぐ橋の持つ中間的な性質を明らかにしていく。ジンメルを引用した前半の哲学的随想風の...

二十一の章それぞれに、「川」や「橋」という標題がつけられている。たとえば、「橋」では、保田與重郎の『日本の橋』を引き合いにしながら、自然と人工、西洋と日本という二項対立の形式を用いて、彼岸と此岸をつなぐ橋の持つ中間的な性質を明らかにしていく。ジンメルを引用した前半の哲学的随想風のスタイルから、後半の文学批評をつなぐのが『日本の橋』の掉尾を飾る熱田の裁断橋である。著者自身の戦時中の回想を交えることで、無理なく金沢に話がつながっていく。そうした上で、鏡花の作品の中で、それらがどのように扱われているかを述べるのだが、浅野川に架かる橋に凭れて眠る男を見守る女という『義血侠血』の天神橋の場にギリシア神話を素材にした泰西名画を想像するなど、イメージの連鎖を多用したスタイルは読んでいて興をそそられる。土地の精霊ゲニウス・ロキについて何度も言及していることからもわかるように、基本的には、鏡花論というより、異様に感応しやすい気質を持った作家であった鏡花を手がかりに、白山女神に始まる神話的世界と、作家の作品世界とを結ぶ地霊、精霊についてのフーガ的な随想と考えた方がいいだろう。各章の終わりがそのまま次章の始まりにつながるように工夫され、金沢から始まって金沢に戻る円環的な構造は、本文にも引用されているホメロスの『オデュッセイア』やウェルギリウスの『アエネイス』さらにはダンテの『神曲』地獄篇を意識したものか。柳田、折口の民俗学の両雄についての言及、ドイツ・ロマン派やメルヒェンについての蘊蓄などをはじめ、引用されている文献、資料は著者独自の趣味性を帯びているものばかりであるのが、読んでいて楽しい。文章は硬質ではあるが洗練されていて読みやすい。個人的には『歌行燈』が『高野聖』とともに鏡花作品中双璧をなすものと思っているが、もしかしたらこれも土地の精霊の働きかけによるのかもしれない。

Posted by ブクログ

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