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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 檜書店 |
発売年月日 | 2000/05/05 |
JAN | 9784827910117 |
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素人が学ぶ能、今月は「安宅」を読んでみます。 いわゆる「安宅の関」のお話です。歌舞伎では「勧進帳」と呼ばれる演目になっています。 華々しい戦果を挙げたものの、兄・頼朝に疎まれた源義経は、奥州へと落ちていきます。途中、義経と身分がばれぬように山伏一行に姿を変えていくのですが、頼朝...
素人が学ぶ能、今月は「安宅」を読んでみます。 いわゆる「安宅の関」のお話です。歌舞伎では「勧進帳」と呼ばれる演目になっています。 華々しい戦果を挙げたものの、兄・頼朝に疎まれた源義経は、奥州へと落ちていきます。途中、義経と身分がばれぬように山伏一行に姿を変えていくのですが、頼朝側もそれを知って、山伏の詮議は厳しくするようにとお達しがあります。 ところは北陸道の要衝、安宅(現在の石川県小松市)。義経一行は、待ち受ける関守、富樫の目を逃れることができるのでしょうか。 義経の家来である弁慶の機転と忠義が印象的なお話ですが、実は一体に、この弁慶という人は実像のはっきりしない人だそうです(一応、実在はしていた模様)。吾妻鏡や平家物語には、それぞれ、1,2か所しか記載がなく、大した働きをしたようには描かれていません。 義経・弁慶主従が活躍するのは物語「義経記」の中からで、これは南北朝から室町初期の成立と考えられ、歴史に準拠しているというよりは、おもしろく書かれた物語です。 能の「安宅」は義経記の中からいくつかのエピソードを抽出して作られており、創作からの二次創作ということになります。能の成立は義経記の成立と時期が重なるようで、この頃、わっと義経人気が高まっていったものでしょうか。いずれにしろ、人々の心をとらえる要素があったということでしょうね。 「安宅」の作者は世阿弥とも観世信光とも言われたこともあるようですが、いずれの作風とも異なり、現在では不明とする説が主流のようです。 安宅の関の警戒が厳重であると知った弁慶は、義経に下僕の姿になるよう頼みます。何とか目を逃れようとする企みです。 この頃、奈良東大寺が南都焼き討ちで焼失しており、その再建のための寄付を募って、諸国に山伏が遣わされていました。義経一行はそのふりをしていたのですが、富樫は山伏が怪しいと聞いた以上、通さずに斬って捨てると言い放ちます。一行は本物の山伏であると思わせようとすごい気魄で勤行を行います。 その迫力に少しひるんだ富樫ですが、本物の山伏というならば、勧進帳を読んでみろと言います。勧進帳とは東大寺再建の寄付を募る趣意書です。もちろん、一行が持っているはずはないのですが、弁慶は朗々とでたらめの勧進帳を読み上げます。 勢いに呑まれて通しそうになった富樫ですが、列の最後に着いた下僕(=実は義経)に目を留め、呼び止めます。弁慶は「己がために先へ進めぬではないか」と下僕をさんざんに打擲し、ついに富樫も一行が本物の山伏と認め、通してやることにします。 最後には、詫びの酒を酌み交わした後、富樫と一行は別れていきます。 歌舞伎の勧進帳だと、富樫は実はこれは義経一行と明らかに気づきながら逃します。弁慶はよんどころない策とはいえ、主君に卑しい身なりをさせた上、さんざんに打ち据える、その弁慶の申し訳なさを感じ取っているわけです。武士の情けといいますか、忠義の心に感じ入って見逃すことにします。 能の場合は、富樫が気づいているのかどうか、最後の最後までわかりません。どちらかというと、腹の探り合い、力と力のぶつかり合い、その緊迫感が見せ場となります。 能の舞台ではあまり大勢が舞うことはないのですが、勤行の場面では、弁慶の後ろに9人もの人が並び、数珠を揉み合わせて謡います。すごい迫力です。 とにかく我が君を北へとお連れせねばならぬ、その一行の一念が胸に迫ります。 そうであればこそ、 虎の尾を踏み、毒蛇の口を、逃れたる心地して、陸奥の国へぞ、下りける の最後の一節が生きてくるとも言えます。
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