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蕨の家 上野英信と晴子
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 海鳥社/ |
発売年月日 | 2000/06/01 |
JAN | 9784874153093 |
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商品レビュー
4
1件のお客様レビュー
上野英信の息子のエッセイ。著者は古本屋を経営しているので、主たる職業は文筆家ではないのだけど、家庭環境によるのか、遺伝なのか、文章はとてもいい。 炭鉱労働者の声を書き続けた英信と、彼を支え続けた母晴子。次々とやってくる来客を一切拒まず、酒と食事と宿を提供し続けるのは(もちろん無料...
上野英信の息子のエッセイ。著者は古本屋を経営しているので、主たる職業は文筆家ではないのだけど、家庭環境によるのか、遺伝なのか、文章はとてもいい。 炭鉱労働者の声を書き続けた英信と、彼を支え続けた母晴子。次々とやってくる来客を一切拒まず、酒と食事と宿を提供し続けるのは(もちろん無料で)、炭鉱で働きながら労働者と話して書き続けるより大変ではないとは決して言えない。炭鉱労働は命を失う危険があるが、お金もないのに、便利な道具もないのに、大量の食事を作り続け、酒を出し、風呂や寝床を用意し、一人で大量の皿を洗い、明日の準備をしてから寝るのが毎日続くのもかなりの過重労働だと思う。現代だったらこういう夫婦関係は成り立たない。当時だって成り立たない夫婦も多かっただろう。 ではなぜ妻は「こんな毎日耐えられない」と出ていかなかったかと言うと、妻が夫の仕事を(出来上がったものだけでなく、その取り組み方も)心から尊敬していたからだろう。(夫が妻を必要としていたのは言うまでもないが。) 現代的な目でみればあり得ない夫婦のありかただし、こんな夫婦になりたいかと聞かれたら、絶対イヤだと答えるが、互いを信頼し、尊敬し、必要としていたことは羨ましい。 結婚して夫の実家に行くことに気後れし、「枕が変わると眠れないから」と言い訳する妻に、憤然として英信は言った。 「ぼくは地獄の底ででもあなたと寝る。枕が変わったくらいなんですか!」(P178) これは惚れるね。 妻も、夫が亡くなったあと息子に言う。 「もしまた人間界に生まれたら、あたしはもう一度英信さんと一緒になろうと思うのよ。今度はうまくやってみせる。英信さんに文句なんて言わせないから!」(P191) これを愛と言わずして何と言うか。 二人がこんな気持ちでいるなら、どんな形の夫婦だっていい。
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