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無援の抒情 岩波現代文庫 文芸16
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 岩波書店/ |
発売年月日 | 2000/07/17 |
JAN | 9784006020163 |
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無援の抒情
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商品レビュー
4.4
6件のお客様レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
20歳前後の、全共闘世代が一番輝いていた時代の歌から始まり、年代を追って詠まれた歌は、もうそんな時代などなかったかのような世相の中で、いつまでも全共闘をひきずっているようで読んでいて痛ましい。 迫りくる楯怯えつつ怯えつつ確かめている私の実在 催涙ガス避けんと秘かに持ち来たるレモンが胸で不意に匂えり 稚き手白き手選びてビラ渡すその手がつかむものを信じて 逮捕され、入牢もした彼女の人生は、しかし恋も多いものだった。 二度の結婚と道ならぬ恋。 実らなかった初恋。 年齢を重ねても凛と佇む姿が人を引き付けるのかもしれない。 生活の疲れを澱とするなかれカールほどけば麩のごとき髪 いつしか同時代をも詠むようになり 本は凶器 本本本本本本本本本本本 本の雪崩 (1995年1月17日……) 信教もイズムも阿片 魂のエクスタシーを誘える蜜 そしてついには (世界より私が大事)簡潔にただ率直に本音を言えば 本当に、世の中の人がみんな全共闘なんかなかったようにふるまっていた頃にも、ずっと全共闘をひきずっていたような人だったから、この歌には正直驚いた。 だって 私だったかもしれない永田洋子 鬱血のこころは夜半についに溢れぬ なんて詠う人だったのだから。 えらそうに書いていても、知っていた歌は ひと恋はばひとを殺むるこころとは風に乱るる夕菅の花 くらいです。 ああ、勉強不足。
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安倍政権による平和憲法の解釈改憲、所謂『戦争法案』成立が進み、市民が次々と立ち上がっている今。読まれるべき歌集と思う。
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1960年代後半に吹き荒れた安保闘争のさなかに青春を生き、しかも全学連に全身を投じた歌人がいた。道浦母都子である。「迫りくる楯怯えつつ確かめている私の実在」―これが歌集の冒頭歌である。圧倒的な数と力を誇示する機動隊を前に、その隊列に突入していくのだ。これが歌として優れ、したがって...
1960年代後半に吹き荒れた安保闘争のさなかに青春を生き、しかも全学連に全身を投じた歌人がいた。道浦母都子である。「迫りくる楯怯えつつ確かめている私の実在」―これが歌集の冒頭歌である。圧倒的な数と力を誇示する機動隊を前に、その隊列に突入していくのだ。これが歌として優れ、したがってまた我々読者を震えさせるのは、歌が単に時代の証人だからではない。「怯えつつ」という表現に籠められた感情の表出が思わず迸るからなのだ。だからこそ「私の実在」に強い共感性が生まれる。そして、闘争の敗北と抒情の勝利がここに結実する。
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