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安禄山 皇帝の座をうかがった男 中公文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 中央公論新社/ |
発売年月日 | 2000/07/21 |
JAN | 9784122036840 |
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商品レビュー
4.5
2件のお客様レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
この本を読めば単なる極悪非道の脇役として見えてこなかった安禄山の別の姿を知ることになります。私もこの本を読んでかなり驚きました。「極悪非道の安禄山が帝位簒奪を目指して反乱を起こした」と一言で言ってしまえばそれでおしまいですが、なぜ彼がそのような暴挙に出たのかということを細かく見ていくとまた違ったものが見えてきます。 彼も最初から進んで皇帝簒奪の野心があったわけではありません。本書を読めばわかるのですが、どちらかといえば、宮廷内の権力争いに巻き込まれ、乱を起こすように仕向けられたと言ってもよいほどなのです。「このまま座して黙していてもどの道冤罪を着せられ殺される。であるならば・・・!」という面もあったのです。 玄宗という名君が唐の最盛期をもたらしましたが、その配下たる宮廷貴族たちは自分たちの保身のために凄まじい権力闘争を繰り広げていました。皇帝ですらそうした百戦錬磨の貴族達をうまく操れなければすぐに暗殺されてしまいます。こうした中で安禄山の反乱が起きてくるのです。単に「極悪非道な安禄山」が起こした事件とは言い切れないのはここに理由があります。 本書はそうした伏魔殿たる中国宮廷内の権力闘争の模様や安禄山の波乱万丈の生涯を知ることができます。ものすごく面白いです。村山吉廣著『楊貴妃』とセットで読まれることを強くおすすめします。
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古本で購入。 「開元の治」と讃えられる治世を現出させた玄宗。 彼と楊貴妃のロマンスに代表される泰平の世、豪華絢爛の文化が咲き誇る時代を泡沫の夢と変じせしめた男こそ、本書の主役たる安禄山である。 ソグド人と突厥人の間に生まれ、「雑胡」と蔑まれた安禄山。 己が才知を武器にのし上が...
古本で購入。 「開元の治」と讃えられる治世を現出させた玄宗。 彼と楊貴妃のロマンスに代表される泰平の世、豪華絢爛の文化が咲き誇る時代を泡沫の夢と変じせしめた男こそ、本書の主役たる安禄山である。 ソグド人と突厥人の間に生まれ、「雑胡」と蔑まれた安禄山。 己が才知を武器にのし上がり、玄宗から絶大な信頼と恩寵を受け、楊貴妃の養子となるまでに至る。 しかし、安禄山は恩人たる玄宗になぜ弓を引くことになったのか。 著者はその原因を2つの面から見ている 1つは、楊貴妃の一族である楊国忠との権力闘争。 玄宗期の権力者は、皇帝からの「恩寵」をよりどころにしていたと言っていい。我がゼミの親分・氣賀澤保規が言うところの「恩寵政治」(及び仮父子関係)は、「皇帝を中心とする新たな権力形態を模索する第一歩のあり方」であり、律令体制の動揺と門閥貴族層の弱体化の結果生じた皇帝権の高まりの過程において行われた。 皇帝の恩寵が自分に集まっているか否か。それが死活問題だった。 もう1つは民族闘争の側面である。 安禄山は玄宗本人には好意を持っていたものの、漢民族(著者は「中国人」と言うが、それは変だと思う。「漢民族」も正直微妙だが)の禄を食んでいたのは仮のことであり、あくまで「胡族」としての自分にこだわったとする。 軍の将兵を漢民族ではなく蕃兵で固めていたことからも、それはうかがえると言う。 最後に著者は安禄山とその腹心・史思明による「安史の乱」をこう総括する。 「安禄山・史思明の乱はあらゆる面に影響をおよぼし」 「唐はこれら反乱の傷痕を癒しきれないまま滅亡へと向かう」 とは言うものの、 「乱をそれほど高く評価するには当たらない」 のであって、乱が与えた影響自体も 「すでに反乱以前より進行しつつあった諸現象にすぎず、反乱はそれに拍車を掛けた」 だけであるとする。 安禄山の乱を述べるにあたり、前史として唐の成立から書き起こしているが、改めて驚くのは唐帝室の権力基盤の弱さである。 則天武后や韋后らの女性たち、その一族らによってガタガタに揺さ振られ、時に玉座すら奪われ、時に天子が蒙塵する。宮崎市定の言うように、我々は唐という王朝を少々過大評価しているのかもしれない。 ちなみにこの著者は宮崎市定の直弟子のようだ。師には及ばないまでも、読みやすくおもしろい文章を書いていると思う。 地図が少ないのは不満だが、滅亡への道を歩み始める唐中期ごろを概観するのにちょうどいい本。 それにしても中公文庫の中国史人物評伝は優れたものが多い。売れないからか、どれもこれも絶版なのが惜しい。今後も期待したいところなのだが…
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