混沌と秩序 世界有数のカード会社・VISAカードの組織改革 未来ブックシリーズ

ディー・ホック(著者), 村上彩(訳者)

• 販売会社／発売会社: たちばな出版/
• 発売年月日: 2001/01/12
• JAN: 9784813312673

商品レビュー

2021/12/11

　「世界がこれまでとは違う価値観に移行している」というテーマにピンときたら読むべき本である。混沌と秩序（ケイオーディック）の組織の序論である。
　著者のディー・ホックという人がとにかく頭がおかしい（褒め言葉）。知識がたくさんあるという頭の良さではなく、知恵を持つ人とはこういう人なんだなと思わされた。
　筆者には３つの疑問（①あらゆる組織は次第に問題を処理できなくなる、②あらゆる個人は所属組織と対立して疎遠になる、③社会や生物圏は混沌を増す）という大きな問いがある。
　この問いの答えが、混沌と秩序（ケイオーディック）の組織であり、そこには①目的、②原則、③人々、④概念、⑤構造、⑥実践という視点を通じて周囲の状況を理解し、その変化を検証する。
　最初の実例としてクレジットカードのVISAを立ち上げたことになっている。世界中の銀行（およびそれに類する金融機関）を、それぞれを公平にある信条でまとめ上げることができたというのはある意味驚嘆する。VISA（その全身の組織）への参加は自社のルールの厳格運用という趣旨からはかなり外れたことであるがそれがなされたというのは驚きである。
　気候変動やSDGsのそれぞれのゴールの実現性の低さは誰もが心の奥底で思っていることだろう。しかしながら、VISAを皮切に他の業種・業態でも、①実例を造る、②モデルを造る、③知的基盤を造る、④組織を造るを実践し、「○○イニシアティブ」として後進が続いている。この事実は私達にとって「希望の灯火」であると思う。

2011/09/26

ぼくの人生の進路に大きな影響を及ぼした一冊。VISAという特異な組織のCEOを務める中で、人間の組織は複雑系のシステムだ、と気づき、それに余生を捧げることになる男の自伝。VISA時代のエピソード、そして70過ぎて人生のミッションを見つけるくだりも感動的。この本が絶版なのは少しもったいない。