お伽草紙 大活字文芸選書3

太宰治(著者)

• 販売会社／発売会社: 三心堂出版社/
• 発売年月日: 1998/12/14
• JAN: 9784883422388

商品レビュー

2010/02/11

淡い緑の装幀美し、太宰さんの「お伽草子」初版本をもって、紫の菖蒲の浴衣で夏祭り。どこで読むかはわからぬけれど、私が読んでは娘が笑う。「狸さん、可哀想ね」「本当に、そうね」。それが私の今の夢。

2003/12/26

子供向けにデフォルメされていない、原型の昔話は、だいたい残酷だったり悪趣味だったりするらしい。
このお伽草紙は、原型とはまた一味違った形でアレンジがされていて、いろんな風刺を加えている。ただ、あまり物語として面白くはない。

しかし、まあ、五文とは値切ったものだ。あなたのケチには呆れましたよ。私のからだの値段が、たった五文かと思ったら、私は情けなかったね。それにしてもあの時、相手が亀と子供だったからあなたは五文でも出して仲裁したんだ。あの時の相手が亀と子供でなく、まあ、たとえば荒くれた漁師が病気の乞食をいじめていたのだったら、あなたは五文はおろか、一文だって出さず、いや、ただ顔をしかめて急ぎ足で通り過ぎたに違いないんだ。あなたたちは、人生の切実の姿を見せつけられるのを、とてもいやがるからね。(p.244)